絶対の愛


キム・ギドクの新作『絶対の愛』(2006、韓国)を観る。つねに究極の愛のかたちを描き続けているギドク監督は、整形手術を愛の手段としてみせた。


絶対の愛 [DVD]

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恋人同士としてセヒ(パク・チョン)とジウ(ハ・ジョンウ)は2年間続いているが、セヒは男が自分に飽きてきたのではないかと疑問を抱く。もちろん永遠の愛などありえないのだが、現実に恋人が自分に愛を向けるのが当然と思っているといつか破局がくる。セヒは整形しスェヒ(ソン・ヒョナ)に変身することで、再びジウの前に姿を現す。


二人は「絶対的な愛の関係」にあったはずであるにもかかわらず、セヒは最後のところでジウを信じらなかった。セヒが整形手術を受けスェヒになり、ジウにセヒであることを告げず、最初からやり直そうとする。一方、ジウはスェヒと付き合いながらも、突然行方不明になったセヒのことが忘れらない。


しかしついに、スェヒが整形をしたセヒであることがジウに解ってしまう。このシークェンスがなんとも凄い。いつもの喫茶店で、スェヒはセヒの仮面を付けてジウを待っていたのだ。仮面のスェヒを見たジウは、衝撃を受け、自らも整形をし失踪する。スェヒになったセヒは、ジウを探すが出会えない。そして再びスェヒは別人になるべく、整形を受ける。第三の女になったスェヒはマスクをして、美容整形所からでてくる。そこへセヒが通りかかり二人は衝突する。これは、実は冒頭シーンと同じであり、ここで映画は一旬したことになる。


サマリア [DVD]

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さて、あとは観る者が考えなければならない。キム・ギドクは一貫して男女の「究極の愛の姿」を表現してきた。『絶対の愛』で韓国では普通といわれる美容整形を取り上げていることに新鮮な試みを感じる。『サマリア』(2004)では援助交際をとりあげ、『うつせみ』(2004)は留守宅を寝泊りする男と女の話であったように異様な設定である。


うつせみ [DVD]

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キム・ギドク作品は、愛の映画であり、作品毎に様々なかたちの愛を描いてきた。極論すれば同じ主題の反復といっても過言ではない。『鰐』以来、ギドクの多くの作品に出演しているチョ・ジェヒョンが、寡黙な男性として監督の精神を代弁しているようにみえる。寡黙なチョ・ジェヒョンの存在が頂点に達したのが『悪い男』(2002)だろう。


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ただ私的には、キム・ギドク=フィルムの中で異色の『春夏秋冬そして春』(2003)を最も評価したい。罪深い人間の生涯の縮図となっているからだ。


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