魔笛
オペラ『魔笛』の「序曲」にあわせて、キャメラは緑あふれる自然を捉えたかと思えば大移動をし、第一次大戦の塹壕の中へ入り込む。大胆な解釈によるケネス・ブラナー版『魔笛』は、冒頭から一気にドラマに引きこんでいく。
- アーティスト: サントラ,ジョセフ・カイザー,エイミー・カーソン,ベン・ディヴィス,シルヴィア・モイ,ルネ・パーペ,リューボフ・ペドロヴァ,トム・ランドル,ケール・ワルソン,ジェイムズ・コンロン,ヨーロッパ室内管弦楽団
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塹壕の中に兵士タミーノ(ジョセフ・カイザー)がいる。最前線で戦っているわけだ。敵の毒ガス弾で倒れたタミーノを救うのが、「夜の女王」の三人の侍女たち。なんと夜の女王(リューボフ・ペトロヴァ)は戦車に乗って登場し、娘パミーナ(エイミー・カーソン)を悪魔ザラストロ(ルネ・パーペ)のもとから救出して欲しいと、タミーノに依頼する。
タミーノは塹壕で偶然出会った鳥刺しパパゲーノ(ベン・デイヴィス)とともに、悪魔ザラストロの城を目指す。歌劇のなかで善悪が逆転する画期的発想でつくられたオペラ『魔笛』を、第一次世界大戦を舞台に選んだ理由が、ザラストロが指揮するグループの存在を浮かびあがらせることにある。
戦争犠牲者の墓地を、国を問わず平等に埋葬し、名前もイギリス人の隣に日本人名があり、ロシア人名がありといった按配で、ザラストロを平和主義者集団の指導者に設定されているところが、この映画の核であろう。この共同墓地を捉えたキャメラが引いて行くと、膨大な墓石が延々と連なっている景観に圧倒された。
ドラマは第一次世界大戦から、「夜の女王」対「ザラストロ集団」にいつの間にか変容しているあたりも見事な展開といえよう。オペラの見せ場はしっかりと映像的に工夫が凝らされ、観て聴いて楽しめ、しかもそこに、戦争の無為意味さが内包されているというきわめて現代的な主題に収まっている。
有名な「夜の女王のアリア」やパパゲーノとパパゲーナ(シルヴィア・モイ)による「パパパの二重唱」など、舞台とは異なる映像ならではの空間を活かした演出になっていて、観るものを十分に楽しませてくれるのだ。
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モーツァルトのオペラ『魔笛』の映画化といえば、ベルイマンによる『魔笛』(1975)のことを指すくらいだが、監督がケネス・ブラナーとなれば期待度も大きい。その期待に違わず、オペラと映画が融合された実に優れたフィルムになっていることに大きな感銘を受けた。
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