『ロング・グッドバイ』読了


村上春樹新訳『ロング・グッドバイ』を読了。分かったことは、チャンドラーは徹底して「文体の作家」だということ。文体の魅力とともに、文明批評がシニカルに展開されている。村上春樹は、チャンドラーの比喩や形容することばの過剰さを、引き継いでいることは確かだ。作品の影響関係というより、「文体」の影響が大きいと思う。


清水俊二訳『長いお別れ』は、二冊もっていた。カバーが異なるが内容は同じ。清水訳は意訳された名文や名句を生み出した点でも、まだまだ存在価値はある。「翻訳の賞味期限」なるものがあるかどうかは、断定できない。何故なら、鴎外や四迷の翻訳本はいまだ健在だから。


小鷹信光は『私のハードボイルド』(早川書房、2006)で、理由をあげながら、村上春樹の新訳本に「大いなる期待と信頼を持って、私はこの新訳の刊行を待ち望んでいる。」(p.329)と記していることを付言しておきたい。(2007年3月17日補記)

私のハードボイルド―固茹で玉子の戦後史

私のハードボイルド―固茹で玉子の戦後史