村上春樹を聴く。
村上春樹ほど日本のみならず、広く世界で読まれている作家は、かつての日本にはいなかった。文豪・漱石を凌駕する勢いだ。漱石は同時代に受け入れられ、死後その人気は増幅されている。村上春樹は現代の漱石である、と言っても過言ではあるまい。その村上春樹の作品に引用される音楽に関する本が出版された。
- 作者: 小西慶太
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2007/03/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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小西慶太『村上春樹を聴く。ムラカミワールドの旋律』(阪急コミュニケーションズ、2007)は、村上作品に頻出する音楽にのみ目をつけ、ディスコグラフィを作成した労作であり、着眼点が面白い。それぞれのアルバムの出典する頁が、文庫本を中心に採録していることも、利用者を想定しての索引の役割を果たしており好感が持てる。
『ダンス・ダンス・ダンス』が一番多い。次いで、『ノルウェイの森』『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』となる。
引用されるアーティストは、ビートルズ、モーツァルト、バッハ、ボブ・ディラン、ビーチ・ボーイズ、ベートーヴェン、ローリング・ストーンズ、ドアーズ、エルビス・プレスリー、デューク・エリントンなど。
- 作者: 和田誠,村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/12/01
- メディア: 単行本
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古典派のバッハ、モーツァルトは当然であろうし、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディランにビーチ・ボーイズやエルビス・プレスリーとくれば、周知のポピュラー音楽であり、文句のつけようがない。更に、マニアックなアーチストをそっと忍ばせているなど、心憎いではないか。ジャズに詳しい村上春樹は、和田誠の絵を付して出版した『ポートレイト・イン・ジャズ』(新潮社、1997)『ポートレイト・イン・ジャズ2』(新潮社、2001)がある。
- 作者: 和田誠,村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/04/01
- メディア: 単行本
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本の出版とともに、選曲されたジャズアルバムは、『ポートレイト・イン・ジャズ』CD2枚に収録されている。ドライヴの際のバックミュージックとして、重宝している。
- アーティスト: オムニバス,チャーリー・パーカー,ハーブ・ゲラー,アート・ブレイキー,スタン・ゲッツ,ビル・エバンス,デューク・エリントン,村上春樹,和田誠
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1998/05/13
- メディア: CD
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『村上春樹を聴く。』には、12曲をギター・ソロ・アレンジにより収録したCDが付録としてついている。「カリフォルニア・ガールズ」「ホワイト・クリスマス」「イパネマの娘」「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」「泥棒かささぎ序曲」など。
- アーティスト: オムニバス,ビリー・ホリデイ,マイルス・デイビス,ベニー・グッドマン,ビックス・バイダーベック,ジェリー・マリガン,デクスター・ゴードン,チュー・ベリー,ルイ・アームストロング,チャーリー・クリスチャン
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1998/06/20
- メディア: CD
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それにしても、村上春樹作品がいかに多くの音楽を引用しているかがよく分かる。音楽を意識して読むところまで、村上作品を読み込んでいないので、本書は参考になる。もちろん、村上春樹自身が『意味がなければスイングはない』(文藝春秋、2005)を出版していることは改めて、取り上げるまでもないだろう。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: 単行本
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『意味がなければスイングはない』と、小説に引用された音楽と重なるのは、シューベルト「ピアノ・ソナタ17番」とスタン・ゲッツ、ブルース・スプリングスティーン、ルービンシュタイン、スガシカオとプーランク。特に思い入れの深いアーティスト。村上春樹は「あとがき」に書いている。
考えてみれば、書物と音楽は、僕の人生における二つの重要なキーになった。(p.277)
当然のことながら、ゆくゆくは文学か音楽を職業にしたいと希望していたわけだが、結局は音楽を職業にすることになった。(p.278)