バックラッシュ!


双風舎さんが6月26日に発売した『バックラッシュ!』について、一言述べておきたい。この本に関しては、事前のパブリシティ、とりわけネット社会を巧みに利用した一種のキャンペーンを行ってきた。
<『バックラッシュ!』発売記念キャンペーン>なるブログが、5月24日に開設され、ネット社会では、『バックラッシュ!』現象が起きているかのような印象を受ける。*1ちなみに、小生は、6月15日にAmazon.co.jpに予約注文したが、28日22時*2現在、肝心の予約本が未発送なので、手元には現物がない状態で、書いていることをあらかじめお断りしておきたい。


バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?

バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?


双風舎さんlelele氏のブログ「双風亭日乗」の6月28日の日記から引用する。

アマゾンの倉庫には、27日に入っておりますので、順次発送がはじまると思われます。そういえば、コメント欄にbk1とアマゾンを比較するご意見がありましたね。弊社は双方と直販で付き合っているので、〈弊社→アマゾンまたはTRC〉納品スピードに変わりはありません。そこから先は、両社の対応次第といったところです。


つまり、取次ぎに搬送したのだから、「そこから先は、両社の対応次第」という表現をされている。続いて双風舎bk1の関係について次のように触れている。

ちなみに、TRCの子会社となってからのbk1には、申し訳ないのですが事前予約で本を売る意欲があまり感じられなくなりました。ですから、今回も事前予約を受け付けていたのはアマゾンだけでした。弊社の書籍についても、刊行から半年間のみの取り扱いであり、それ以降は売ってくれません。まあ、そういう契約をしているわけですが、こちらから継続して販売してもらうべく問いかけても、なかなか対応してくれないのです。そんなわけで、弊社とbk1との関係は、けっしてスムーズだとはいえません。ですから、どうしてもネット書店に関しては、アマゾンを重視して本を売らざるを得ないのです。


Amazon.comの商法については、「ロングテイル」という現象を生み出したくらいだから、多種多様の商品を取り扱うことで、ベストセラーに匹敵するくらいの小部数の本の売り上げがあることは周知のとおり。双風舎さんの言い分からは、bk1は「事前予約で本を売る意欲があまり感じられなくな」ったという。確かに、双風舎さんの旧刊はbk1では入手できないのが現状である。一方、Amazon.co.jpには、10点の本が購入できる。Amazon.co.jpの特徴は、「ユーズド商品」を安価に入手できる利便性にあると思う。一方、bk1では、『バックラッシュ!』を含めて、6点しか入手できない。しかも、双風舎さんのロングセラーと予測される宮台真司の対談集三部冊『挑発する知』『日常・共同体・アイロニー 』『限界の思考』*3は取り扱われていない。


限界の思考 空虚な時代を生き抜くための社会学

限界の思考 空虚な時代を生き抜くための社会学

日常・共同体・アイロニー 自己決定の本質と限界

日常・共同体・アイロニー 自己決定の本質と限界

挑発する知

挑発する知


以上のことを踏まえて、地方在住者から、敢えて苦言を呈したい。現在の出版は、その規模にかかわらず、ほとんど東京を中心に思考・展開されている。小生の場合本の購入は、新刊で急ぐ場合はbk1で、少し遅れてもいい場合は取り寄せを特定の一書店に限定して注文している。もちろん、Amazon.co.jpで「ユーズド商品」があれば、Amazon.co.jpを利用する。(古書は別)


これまでAmazon.co.jpで予約した本が、発売日に発送されたことがないので、新刊書の予約はAmazon.co.jpを避けてきた。今回は、いってみれば、「キャンペーン」が面白いがためにそれに乗って、Amazon.co.jpで予約してみたが、結果は上述したとおり、発売2日後に「未発送」状態である。普段どおりbk1(現在24時間以内入手可)で注文した方が、早く手元に届くという皮肉な現象になっている。


ここで何がいいたいか、聡明な双風舎さんはお解りだと思うが、「キャンペーン」を張るのであれば、直販すべきであり、出版社として読者の手元に届くまで責任を持つべきではないかということだ。あるいは、「版元ドットコム」のような対応をすべきではなかったか。おそらく、「キャンペーン」に乗ってAmazon.co.jpで予約した地方の読者は、『バックラッシュ!』を28日現在で入手していないはず。「双風亭日乗」のブログでは、都内のどの書店にあり云々といった内容の報告をされているが、地方の読者を無視(あるいは軽視)している。書店の「対応次第」ということばから、取次ぎに引き渡せば、あとは知らない、と聞こえる。双風舎さんは、lelele氏一人で良い本を出版されているだけに、今回の事態は残念に思う。本の感想以前の問題で、こんなことを書きたくないのが本音だが、ネット社会の負の部分が出たとしか思えない。あとは、届いた本についてしっかり読ませていただく(「熟読玩味」=小林秀雄)。


たかだか、一冊の新刊本の入手が2〜3日遅れたくらいで「文句を言うな」ということだろうが、「キャンペーン」ブログなどの喧騒ぶりから、都心優位の姿勢が視えてくることで「出版文化の問題」として気になったからである。決して悪意からではなく、ネット社会におけるお祭り騒ぎのような「パブリシティ」の在り方について、地方からの意見の一つとして受け止めていただきたい。

*1:この<『バックラッシュ!』発売記念キャンペーンブログ>は刺激的で、十分に有意義であることは言うまでもありません。事前情報として大変面白く有益だった。

*2:29日16時現在でも未発送のままであり、今月中には届きそうもない。

*3:この三冊は小生も新刊時にbk1で購入している。