ゴッドファーザー・デジタルリマスター版


いまさらではあるが、すでに古典的名作になっている『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザーPART Ⅱ』の二本を、デジタルリマスター版で観る機会があった。あらためてこのフィルムが持つ総合芸術としての映画の素晴らしさを堪能した。


ゴッドファーザー [DVD]

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イタリアン・マフィアの世界を描いているが、同時に、家族・一族・組織のあり方について観る者に考えさせる内容であることを再確認した。


映画の冒頭は、ドン・コルレオーネの末娘(タリア・シャイア)の結婚披露宴が野外で、盛大に執り行われている。一方ではカーテンを閉めた暗い室内で、ドン(マーロン・ブランド)が、多くの訪問客から要望を受け、その解決を約束し「ゴッドファーザー」の絆を確認している。というように、いまさら、ストーリーを紹介するまでもないので、今回観直して気づいた点を、思いつくまま列挙してみたい。


まず、ドンが襲撃され入院しているとき、マイケル(アル・パチーノ)が夜中に病院に着くと、見張りの人や警察が一人もいない。不審に思っているところへ、悪徳警官がマイケルを逮捕しようとする。その警官役がなんと、老いたスターリング・ヘイドンだったこと。従って、マイケルによってソロッツォと二人が、レストランで殺害されることになる役だ。スターリング・ヘイドンといえばニコラス・レイ『大砂塵』やスタンリー・キューブリック現金に体を張れ』の出演で、記憶に残る雰囲気を持つ俳優だった。


ゴッドファーザーPART Ⅱ』のラスト近くで、回想シーンとして父ドンの誕生日にマイケルが軍隊に入隊したことを告げるシーンがあった。これは、『PARTⅠ』にはなかったシーンであり、そこに、『PART Ⅱ』現在で既に死んでいるジェイムス・カーンが当然のように出ている。当初観たときは、『PARTⅠ』の引用だと思っていたのだが、新たに取り直したものであることが解った。


ゴッドファーザー PART II [DVD]

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シチリア島でのエピソードとして、マイケルがシチリアで結婚したイタリア女性アポロニア(シモネッタ・ステファネッリ)が肉感的な女性だったことで、ケイ(ダイアン・キートン)とは対照的な女性であることの発見。パゾリーニ映画の常連だったフランコ・チッティが、マイケルの警備人でありながら、自動車の爆破にかかわっていたこと。


70年代のマーロン・ブランドの貫禄ある風格、アル・パチーノは若いけれどもその目つきや風貌が鋭角的な現在につながっていること、また、若き日のドンを演じたロバート・デ・ニーロがすごく良い。あえてかすれた声を出し、口髭をたくわえてからは、ほとんどドン=マーロン・ブランドの若き日と接続するくらいに、コルレオーネ家の基礎を創り上げた人物像として輝いている。『PART Ⅱ』は、ファミリーの歴史と現在を交錯させる映画的構成と、マイケルのドンとしての苦悩を抉り出していて秀逸。


最初観たときから際立っていたトム(ロバート・デュヴァル)は、ファミリーを支える兄弟の中心にいる要役として大きい。渋い俳優だが、同じコッポラの『地獄の黙示録』でも狂気の軍曹に扮していたことを、思い出す。
いずれも、映画的記憶という点で気になった細部を取り上げてみた。とりたててどうということのない些細な事柄だ。


いま、『スターウォーズ』最終作の公開が注目されているが、いわゆるCG以前の古典的手法で撮影した最後の大作として、『ゴッドファーザー』は時代を超えた映画として映画史に残ることは間違いない。


スターウォーズ』も、『ゴッドファーザー』もどちらも、実は、家族とりわけ父と子の物語である符合に、驚く。家族の「絆」の崩壊と再生。問題の掘り下げの深さでは、『ゴッドファーザー』がはるかに上であろう。そういえば、フランシス・コッポラの新作を最近観ていない。新作を期待したい数少ない監督だ。



フランシス・コッポラの代表作は、『ゴッドファーザー』と『地獄の黙示録』だろう。

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・小品として、『ランブルフィッシュ』『アウトサイダー』が良かった。

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・『ワン・フロム・ザ・ハート』は好きな映画だ。