タイガー&ドラゴン『子は鎹』


予定調和というか、それ以上に感動的な最終回だった。毎回、古典落語を下敷きに、ドラマを展開させる。『品川心中』から、3年が過ぎ、長瀬智也が刑務所から出所するシーン。仰ぎ気味のキャメラが、昂揚した気分に波長を合わせている。彼が、組へ顔を出すと、塚本高史は立派な二代目になっていた。


落語としては『子別れ』の「中」から始まる。年期あけの女郎・伊東美咲が、別れた女房の代わりに、長瀬智也の長屋に居るが、家事は何ひとつできない。昼間から寝ている。長瀬の別れた妻が西田敏行、これが泣かせるのだ。


鶴瓶西田敏行の和解があり、二代目どん兵衛を継ぐ岡田准一は、長瀬智也を探しあて、長瀬智也がかつて、岡田准一に「落語家」に戻るよう説得した心境を、逆の立場から話をするくだりがあり、長瀬智也刑務所の中で落語の勉強をしていたことが分かる。やがて、『子別れ』のラストシーンが、バスガイドパブで、演じられることになる。


二代目どん兵衛襲名披露に、五人が頭を下げて舞台に並ぶ。まず、春風亭昇太が口上を述べ、阿部サダヲが、ついで、岡田准一の横に「子猫」と名乗った西田敏行が、右端には三代目「子虎」として長瀬智也が、挨拶をする。落語家に復帰した長瀬智也は、『子別れ』の「下」を独立させた『子は鎹』を演じる。
「タイガー、タイガー、じれっタイガー」の反復で、めでたく幕が引かれる。


客席には、蒼井優の隣に塚本高史が座っていた。また、伊東美咲は下手なインドカレーと大きすぎる「ナン」の料理を、林家亭の家族にふるまっていた。すべてが、丸く収まって大団円。

え!これでいいの?もの足りなさは残るけれど、TVドラマとしては、これしかない終わらせ方だった。まっ、いいか。


原作の宮藤官九郎の脚本は6月25日発売される。第5回の『厩火事』から観たので、その前の部分は、脚本で補うことにしよう。これで、マイ「落語」ブームを、ひとまず終わりにしたい。古典落語には、江戸時代から蓄積された豊富な水脈がある。良い勉強になったし、ほとんどTVドラマを見ない私にとって、何よりも楽しませていただいた。


長瀬智也の俳優としての成長、岡田准一の「落語が上手い」役を受身的に演じる見事さ、西田敏行笑福亭鶴瓶は貫禄だろう。予想外の収穫は、伊東美咲のコメディエンヌぶりだった。脚本がいいし、演出も上出来だった。



タイガー&ドラゴン

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