タイガー&ドラゴン『粗忽長屋』
『タイガー&ドラゴン』は、毎回、レベルの高い映像、ひねったクドカンの脚本、「落語」を現代に読み替える手腕に、舌を巻く面白さ。最近、これほど観ることの快楽を味わい、はらはらドキドキさせるドラマは、稀有な体験だ。
第九回は、シュールな古典落語『粗忽長屋』をモチーフに、長瀬智也にとって因縁の北村一輝との再会から始まる。北村一輝は、組長の舎弟の橋本じゅん・ウルフ会で500万を使い込み、逃げてきたのだった。ウルフ会のヤクザ二人が、北村一輝を探し求めて、追ってくる。
長屋に住むそこつ者・岡田准一が、行き倒れの死体を、隣の長瀬智也だと思い、本人を死体に面会させる。死体の長瀬智也を抱いている「俺・長瀬智也」はだれだ?
この噺を、長瀬智也と北村一輝の関係に置き換えるのが、今回の表の主題で、実は、長瀬智也がヤクザから、ヤクザではないと否定されたこと、また、どん兵衛・西田敏行から、落語家として北村一輝に向えと諭される。もはや、長瀬智也を落語家として師匠が認めていること。試練を与えて、その試練を本人にとって最も困難な方法で解決せよ、というのが西田敏行から、長瀬智也に試みた課題だった。この課題そのものが、裏のテーマ。
冒頭で、組長・笑福亭鶴瓶が上方落語の枕のみ話してタイトル「タイガー&ドラゴン」と叫ぶのは、前回を踏まえてのこと。次回は、『品川心中』とすれば、最終回の落語は何を持ってくるか。当然、最終回の「オチ」が、ドラマ全体のまとめとなるはずだ。
岡田准一が落語家に復帰するが、伊東美咲との関係はどうなるのか。長瀬智也が、再びヤグザに戻ることはないと思うけれど、どのような形で林家亭一門に融け込むのか。蒼井優と塚本高史の関係は?組長・鶴瓶とどん兵衛・西田敏行の関係は?などなど、興味は尽きない。結末に向ってドラマは最高潮に達する。あとニ回が楽しみだ。
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