タイガー&ドラゴン『猫の皿』


タイガー&ドラゴン「三枚起請」の回


荷風が落語家として、人生をスタートさせたことは上述した。落語は単なる江戸趣味ではない。その語り口のなかに、庶民の哀歓が内包されている豊潤な古典文芸だと思う。第7回の『猫の皿』は、短い話ではあるけれど、話のネタとしてクドカンは、いつも以上に、うまく使っていた。


落語芸能協会の新会長として小日向文世が出演している。岡田准一がなぜ、落語家を辞めたのかが、今回の『猫の皿』で明らかになる。なるほど、その手があったか。岡田准一は、小日向文世のもとへ、古典落語「子別れ」を教わりに行く。ところが「猫の皿」ばかり教えられ、高座の前日に初めて、「子別れ」を一度だけ、教わり、肝心の高座で大失敗する。


長瀬智也は、古典落語を「事実」をもとにアレンジして、伝える役割を与えられていることの意味が、今回で明らかになる。『素人お笑いスカウトキャラバン』に、68万円のリーバイスを求めて、岡田准一が大会に出場。なんと審査員に父親のどん兵衛西田敏行や、因縁の会長・小日向文世がいるではないか。覚悟を決めた岡田准一は、『猫の皿』を見事に、演じきり、落語家として復活することが暗示される。


伊東美咲岡田准一の仲も、順調だ。それにしても、岡田准一と長瀬智也の対照的な落語は、まさしく、龍虎=タイガー&ドラゴンにふさわしい。宮藤官九郎の脚本の巧みさには恐れいる。少し、先行きが見えてきた。ますます、眼が離せないドラマだ。


映像やカッティングの速さは、昨今のテレビでは観られない鋭さ。単なるTVドラマではない。もちろんホンが良いからだが、映像のセンスが抜群だ。次回は『出来心』、楽しみに待とう。


長瀬智也は、『真夜中の弥次さん喜多さん』では「てやんでぃ」「べらんめぃ」のせりふ回しと、俳優としての存在感を持つことが分かったが、『タイガー&ドラゴン』でもやくざで落語家というキャラクターを好演している。注目株!