図説 永井荷風


図説 永井荷風 (ふくろうの本/日本の文化)

図説 永井荷風 (ふくろうの本/日本の文化)


「ふくろうの本」シリーズで、川本三郎・湯川説子『図説 永井荷風』が出た。荷風が好きだ。作品はもちろん、むしろその孤高の生き方に羨望を覚える。『荷風全集』(岩波書店)を、古書店で購入した。荷風関連の本はついつい買ってしまう。この図説の著者である川本三郎の『荷風と東京』(都市出版)、江藤淳荷風散策』(新潮社)、磯田光一永井荷風』(講談社)等など。


でも、何よりも荷風の作品をじっくり読みたい。とりわけ『断腸亭日乗』は、いずれそのときが来るまで待つことにしている。率直にいえば、『荷風全集』や『結城信一全集』、『島村利正全集』『小沼丹全集』などを、読みながら静かに時を過ごしたい。


まあ、それはともかく、いまは、『図説 永井荷風』のこと。荷風の場合は、小説家・随筆家・翻訳家、そして「散歩の達人」であった。しかも、その生涯は、落語家から始まり、アメリカ、フランス留学、新帰朝人としての文学者。江戸趣味の文人。生涯、己のスタイルを崩すことなく、「生活の芸術化」を身をもって実践した作家だった。


本書を開き、少しでも、荷風に関心を持てば、岩波文庫で出版されている『つゆのあとさき 』『腕くらべ 』『あめりか物語 』『ふらんす物語 』『濹東綺譚』などを気軽に、読むこと。荷風への入り口は、いくつもある。風俗(花流)小説。随筆。翻訳。日記。『図説 永井荷風』は、「荷風誕生」「江戸趣味の人」「偏奇館炎上」などの項目から、荷風の人生に接近することができる。荷風は、見事なまでに一貫して非政治的な生き方をした。


あめりか物語 (岩波文庫)

あめりか物語 (岩波文庫)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)


やはり、『濹東綺譚』が、一番入りやすいだろう。豊田四郎監督『濹東綺譚』(1960)の映画が、玉の井の雰囲気をよく出していた。