モーターサイクルダイアリーズ


革命家チェ・ゲバラの若き日、友人と旅した記録。
監督は、『セントラル・ステーション』のウォルター・サレス。若いこと、無名であること、そして貧乏。この3つが若さの持つ重要な特権である。

映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」オリジナル・サウンドトラック  
Diarios de motocicleta (2004、英・米)

           
モーターサイクルダイアリーズ』は、のちに有名な革命家になるという歴史的な背景を、一旦捨象して観ること。あくまで、無名で無謀な若者がバイクで旅行するロードムービーとして観る。そうすると、ジャンルとしての青春映画の枠組みに収まらないスケールの大きさが視えてくる。


ゲバラ役のガエル・ガルシア・ベルナルと、先輩で友人役のロドリゴ・デ・ラ・セルナの二人が新鮮な味を出している。ロドリゴは、積極的に南米各国の女性たちに接近して行く。一方、若きゲバラは、人々の置かれている悲惨な状態を、しっかり観察している。


先住民族が土地を強奪され、炭鉱労働者として生きる夫婦が、無言の表情で二人を見る視線が痛い。後に、ゲバラが恋人から預かったドルを先住民夫婦に与えたことが友人との会話で知らされる。紙幣の譲渡をあからさまに描かないことに、作者の慎みが感じ取れる。


とりわけ、ペリー・サンパブロのハンセン病の患者を集めた病院での挿話は、二人が何の偏見もなく患者たちと接して行く態度によって、観る者に感銘をもたらす。患者たちにサッカーゲームをさせるシークエンスには、思わず拍手を送りたくなる。


若者たち二人のうち一人がキューバ革命の英雄となり、ひとりは医者として己の人生を生きることを選択する。


この二本の映画は、フェミニズムを代表する詩人と革命家の伝記映画として、21世紀の今だからこそ、映画として、あるいは彼女・彼らの人生として、距離を置いて観ることができる。映画化にも、絶妙のタイミングというものがあることを教えられる。


■ウォルター・サレス監督作品

セントラル・ステーション [DVD]

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