エドワード・ホッパー


現代画家については、あまり良く知らない。しかし、エドワード・ホッパー(1882-1967) だけは、例外的にその静かな人物のたたずまいや、構図などに惹かれる。最も著名な作品に「ナイト・ホークス(Nighthawks)」(1942)がある。「夜更かしする人々」、夜のコーヒーショップで男女がカウンターに座っている。古いアメリカ映画のような雰囲気である。


旅する哲学 ―大人のための旅行術

旅する哲学 ―大人のための旅行術


最近、エドワード・ホッパーの絵を本の表紙にしているケースをよく見かける。
アラン・ド・ボトン著、安引宏・訳『旅する哲学』(集英社)は、「車両番号293 コンパートメントC(Compertment C Car 293) 」(1938)を表紙にしている。それだけで、購入してしまった。帽子を深くかぶった女性が、列車の座席で読書している引き込まれるような絵だ。


この本の第2章のなかで、「ホッパーの旅路の情景」として、エドワード・ホッパーに導かれて、著者は旅する。パリでボードレールの詩を発見したホッパーは、アメリカへ帰り、アメリカを縦横断しながらスケッチをしていた。のちにそれらが、「自動販売食堂」(1927)や「ホテルの部屋」(1931)、また「ガソリン・スタンド」(1940)となって絵画として残された。


グレイス・ペイリー著、村上春樹・訳『最後の瞬間のすごく大きな変化』(文藝春秋)は、「朝の日差し(Morning Sun)」(1952)が表紙に用いられている。


最後の瞬間のすごく大きな変化

最後の瞬間のすごく大きな変化


彼の画集で私が持っているのは、『エドワード・ホッパー 30ポストカード』(TASCHEN)*1一冊のみである。*2解説によると、「近代的都市生活者の孤独と、自然がたたえる穏やかさ」と記されている。


クリント・イーストウッド監督の『トゥルー・クライム』(1999)に、エドワード・ホッパーの「ナイト・ホークス」のようなシーンが出てくる。クリント・イーストウッドの世界は、ホッパーの描く絵画のシーンに非常に近い印象を受ける。イーストウッドの存在に都会生活者の孤独の影があるし、アクションものでさえ、もの静かにたたずむ人物のイメージがある。とくに、年齢を重ねるに従い、エドワード・ホッパーの絵画のなかに入っても不自然ではないように思える。


WebMuseum, Paris にエドワード・ホッパーのサイトがあり の3つのカテゴリーに分けられている。*3


エドワード・ホッパーの画集と作家論(解説)が一冊にまとまっている本の出版を待っているところだ。