東京タワー
リリー・フランキーの大ベストセラー小説の映画化。監督・松岡錠司『東京タワーオカンとボクと、時々オトン』を観る。故郷を離れ東京(都会)に出た人なら、必ず実感するはずの母への思い。親子の絆が希薄化しているからこそ、この古典的な主題をストレートに描いた小説が売れ、テレビドラマとなり、映画化される。
映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」オリジナルサウンドトラック
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同じ原作を何度も反復して味わうことができるのは、そこに普遍性が存在するからで、結末が解っていても観てしまう。
話題は、樹木希林と内田也哉子の母子が同じオカンの若い頃と、現在の母を演じたことにある。ほとんど違和感なくオカンがいる。オトンは若いころから現在まで不思議なほど変わらない小林薫。
九州の田舎の時代感覚を再現した場所がいい。かつてあった懐かしい時代が甦る。多くの観客は、ラスト近くオカンの抗がん剤治療あたりから、泣きが入ると思われるが、私の場合は、ボクのオダギリジョーが、東京にオカンを呼ぶシーンでぐっときてしまった。
故郷を捨て家族を忘れ、時々思い出したように帰省するような故里と母親。「母と子」は永遠のテーマであり、『東京タワー』の場合は、上京すること、学生生活を堕落して過ごすこと、卒業後も相変わらずの堕落生活が続くこと。しかし、「仕事」に目覚めたボクは、次第に環境を変えて行く。成功する人は少ない。それでも、オカンの病気を知り、東京へ呼び寄せるボクは、もちろん単なるマザコンではない。不在がちの父・小林薫との関係が幸福とはいえなかった母親へのボクの思いの強さ。
それにしても、これほどストレートに「母親孝行」を描いた原作=映画は、近頃ではめずらしいのではないか。古典的にまで昇華されたフィルム。メインキャスト以外の出演俳優さんたちが揃っている。ワン・ショット顔を出す、小泉今日子、宮崎あおい、松田美由紀、柄本明等々、楽しみなシーンも多い。
オダギリジョーの恋人役・松たか子もいい。どうして別れたのか、二人が車のなかで松たか子が樹木希林から貰ったという指輪の話のシーンは見逃せない。二人の心情をキャメラが見事に捉えているのだ。
『東京タワー』は、幸福な映画だ。オダギリジョーと樹木希林の母子が恋人のように手をつないで病院へ歩いて行くシーンが泣ける。映画で泣くことはほとんどないが、『東京タワー』には泣かされた。それは、自分の母親の死と重ねて観てしまうからだ。
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原作本については拙ブログ「2006-04-21 」に記録した。原作と映画は異なるのが当然。松岡錠司の演出は素直で好感が持てる。現在と過去を交互にカッバックして構成した脚本・松尾スズキが良い。
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