グーグルGoogle


佐々木俊尚『グーグルGoogle−既存のビジネスを破壊する』(文春新書)読了。グーグルに関しては、梅田望夫ウェブ進化論』(ちくま新書*1に次いで、ネット社会の現在と未来を予想するきわめて興味深い内容になつている。


グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)


極論すれば、梅田氏は楽観論、佐々木氏は、悲観論といっていいだろう。佐々木氏の本書では、梅田氏が触れていないが、グーグルが「司祭的権力」を持つ可能性に言及している。かつてジョージ・オーウエルが『1984』で描いたように、監視社会はあらゆる情報を把握するグーグルによって支配される?民間企業のグーグルは、検索エンジン開発時の発想は、技術者としての新しい試みであったが、やがて政府からの規制を受けている事実にも触れている。


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


情報の一元的管理による権力的支配は、現在では<グーグル>という私企業に象徴されているが、その先にあるのは、<グーグル>的存在にほかならない。


グーグルが果たしている業績は、企業も個人も対等に検索結果として表示されることにある。ポータルサイトの持つ意義が薄れ、利用者は「検索エンジン」から情報を探すことが自然となった。


マーケティングでは、「パレートの法則」を否定する「ロングテール」現象は、梅田氏も指摘していた。市場原理がネット上では、大きく変貌している。

佐々木氏の「あとがき」が本書の要約になっている。

グーグルは、強力な広告ビジネスを背景に、古い世界の秩序を壊し、伝統的な企業のビジネスを破壊しようとしている。/グーグルは、ロングテールによつて中小企業を再生させ、新たな市場を創出しようとしている。/グーグルは、人々の情報発信を手助けし、企業や政府などの強大な権力と同じ土俵に上がらせようとしている。/しかしその一方で、グーグルはそれら新しい秩序の中で、すべてをつかさどる強大な「司祭」になろうとしている。それは新しい権力の登場であり、グーグルにすべての人々はひれ伏さなけれならなくなるかもしれない。(p.243)


問題は、強大な「司祭」になろうとしていることにある。両刃の剣というべきか。

*1:2006年2月12日の拙ブログで言及した。