V フォー・ヴェンデッタ


『グーグルGoogle』から、最近観た『V フォー・ヴェンデッタ』を連想したといえば、強引になるだろうか。


Vフォー・ヴェンデッタ (竹書房文庫)

Vフォー・ヴェンデッタ (竹書房文庫)


第三次世界大戦が終了したとされる2020年が、時代設定されている。近未来、アメリカはイギリスの植民地になっている。イギリスでは、サトラー議長(ジョン・ハート)による専制政府の支配下にあり、そこでは、異教徒、移住者、同性愛者、政治活動家、不治の病人たちが排除された世界。監視カメラがいたるところに仕掛けられている。現在の世界のありようの延長上の世界を想定すれば、おそらくこのような監視された世界が出現するであろう。


マトリックス』のウォシャウスキー兄弟の製作になるジェイムズ・マクティーグ監督『V フォー・ヴェンデッタ』(2006)。物語はイギリスの国会議事堂を破壊しようとした1605年の火薬陰謀事件を下敷きにしている。それが映画ので冒頭で示され、首謀者ガイ・フォークスの「理念は生き延びる」のことばが印象に残る。400年後の物語に、理念が仮面の男「V」(ヒューゴ・ウィービング)によって引き継がれる。


マトリックス 特別版 [DVD]

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専制政府となる過程で、作家であった父親と母は収容所で死亡し、弟はウイルスによる事故に巻き込まれ死亡した。施設で育ったイヴィ−(ナタリー・ポートマン)が、Vに協力することになる。イヴィ−の父・作家の言ったことば「小説は虚構だが、嘘のなかに真実がある」とは、「政府による政治は現実だが、その根底には嘘がある」ことが、この世界を支えている。


ラストで仮面をつけ国会議事堂に向かう群衆は、ネグリ&ハートの「マルチチュード」に相当するといえよう。


世界は、フーコーのいう「パノプティコン(一望監視施設)」*1となる可能性を孕んでいる。情報の一元的管理、換言すれば監視された世界の窮極の姿を、この映画に視てしまうのだ。