10話


アッバス・キアロスタミ監督『10話』(2003)一人の女性が運転する車に乗り合わせた6人との対話を、ほとんど移動しないキャメラ(DV)を据えて長まわしで撮るスタイル。一種、ドキュメンタリー映画のように見えるが、その背景には綿密な演出がある。まず、女性の息子が乗車する。別れた父親と同居しているが、時々、母親の車に乗る。息子は、母親への不満を延々とまくしたてる。女性にとって、家事よりも、自分の仕事、写真や絵を描くことを優先していることを、息子に説明するが、理解されない。


ついで姉、さらに毎日礼拝に3回行くという老女、恋人と別れ話が出ている女性、街の娼婦たちを助手席に乗せて、会話を交わす。運転する女性は、テヘランでは中流階級に属するようだ。日常の断面を、車という限られた空間のなかでのクロース・アップのみで撮る手法が、鮮やかに現在のテヘランに住む人々の内面を写しだしている。
いかにも、キアロスタミらしいフィルム。


キアロスタミ『10話』紹介サイト
http://theater.nifty.com/db/0000050017/main.jsp


キアロスタミといえば、『友だちのうちはどこ?』だろう。

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