映画ベストテン2018
今年、映画館のスクリーンで観た映画は113本。久々の100本超えだった。
例によって『キネマ旬報12月下旬号』に依拠して、外国映画、日本映画それぞれのベストテンを以下に記す。
【外国映画】
1.スリー・ビルボード(マーティン・マクドナー〉
2.ボヘミアン・ラプソディ(ブライアン・シンガー)
3.犬ヶ島(ウェス・アンダーソン)
4.ザ・ビッグハウス(想田和弘)
5.ウィンストン・チャーチル(ジョー・ライト)
6.スターリンの葬送狂騒曲(アーマンド・イアヌッチ)
7.アイ、トーニャ(クレイグ・ギレスピー)
8.女は二度決断する(ファティ・アキン)
9.15時17分、パリ行き(クリント・イーストウッド)
10.フロリダ・プロジェクト(ショーン・ベイカー)
次点
◎シェイプ・オブ・ウォーター(ギレルモ・デル・トロ)
◎判決、ふたつの希望(ジアド・ドゥエイリ)
◎ペンタゴン・ペーパーズ(スティーヴン・スピルバーグ)
◎ルイ14世の死(アルベルト・セラ)
◎ハッピー・エンド(ミヒャエル・ハネケ)
◎ゲティ家の身代金(リドリー・スコット)
◎女と男の観覧車(ウディ・アレン)
◎ウインド・リバー(テイラー・シェリダン)
◎ファントム・スレッド(ポール・トーマス・アンダーソン)
●バッド・ジーニアス 危険な天才たち(ナタウット・プーンピリヤ)
タイ映画としては、ハリウッドスタイルで良く出来ていた。
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『ボヘミアン・ラプソディ』は、クイーンのフレディ・マーキュリーを主人公とするドキュメント風回顧譚であるが、圧巻の歌とパフォーマンスにより、きわめて感動的な作品に仕上がっている。
『スリー・ビルボード』をベストとしたのは、作品内人物が時間とともに大きく変貌する様子が予想を超えるともいえる出来に圧倒されたから。
想田和弘の『ザ・ビッグハウス』は、ミシガン大学のフットボールチームの10万人を収容できるスアジアムを観察するというとてつもない記録映画だ。まさしく、これぞアメリカ!
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アーマンド・イアヌッチ『スターリンの葬送狂騒曲』は、ロシアで上映禁止となった上質のブラックコメディで。独裁者スターリンの突然死の直後から、次期の第一書記を狙う側近たちの駆け引きは、スターリニズムの内実と崩壊をコミカルに描いていて秀逸。
【日本映画】
1.日日是好日(大森立嗣)
2.万引き家族(是枝裕和)
3.寝ても覚めても(濱口竜介)
4.カメラを止めるな(上田慎一郎)
5.孤狼の血(白石一彌)
6.素敵なダイナマイトスキャンダル(冨永昌敬)
7.きみの鳥はうたえる(三宅唱)
8.斬、(塚本晋也)
9.散り椿(木村大作)
10.教誨師(佐向大)
次点
◎食べる女(生野慈朗)
◎銃(武正晴)
◎モリのいる場所(沖田修一)
◎検察側の証人(原田眞人)
◎港町(想田和弘)
◎焼肉ドラゴン(鄭義信)
◎スマホを落としただけなのに(中田秀夫)
◎コーヒーが冷めないうちに(塚原あゆ子)
●生きてるだけで、愛。(関根光才)
主演の趣里が、内面の狂気を表現する如何ともしがたい性格を絶妙に演じていた。
樹木希林という女優の偉大さを改めて知らされた一年だった。通常は『万引き家族』をベストにするであろうが、敢えて大森立嗣の『日日是好日』を持ってきた。すぐに解かることと、時間をかけてわかることの違い。物事には<型>から入ることの大切さを知ることとなった。
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話題は、低予算の『カメラを止めるな』が予想外の大ヒットしたことだろうか。ホラー映画をワン・カットで撮り、その裏側を解説するという発想がいい。後半は爆笑ものだった。アイデアの勝利というところか。
今年、他界した名脇役俳優・大杉漣の初主演映画で遺作となった『教誨師』は、牧師(大杉漣)が六名の死刑囚と延々話を交わすシーンがと続く地味な作品だが、途中の変容が俄然、画面を輝かせる。次点作と置き換え可能だが、大杉漣氏へのオマージュを込めて10位とした。
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白石一彌『孤狼の血』は、女性作家・柚月裕子原作だが、東映『仁義なき戦い』以来の、やくざと警察の抗争に肉薄した凄絶なフィルムとなっている。
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冨永昌敬『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、末井昭の自伝を映画化した。母親が愛人とダイナマイトを抱いて自殺するという驚くべき少年期を経て雑誌編集者になり、権力と向き合うアナキーぶりに観る者は、ぶっ飛んでしまう。
想田和弘の観察映画『ザ・ビッグハウス』と『港町』、二作品が外国映画と日本映画の双方でベストテンに関わるという画期的な年でもあった。
なお、瀬々敬久の『菊とギロチン』は、上映時間(189分)の長さ故、敬遠したことを補足しておきたい。また、次点として挙げているリストは、置き換え可能であることを申し添えておきたい。
さてさて、100本以上の映画をスクリーンで観るのは、今年で最後にしたい。とりあえずのベストテンは本年にて終了にしたい。
2004年から本ブログでは、16年にわたり映画ベストテンを選出してきたが、今、振り返るとその年・その時点でのベストテンであった。いずれオールタイム・ベスト50を選出してみたいと思うが、その時は年度別の意味は喪失するということになる。
小津安二郎の作品をじっくり見直してみたい心境である。
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【補足】
ベストテン発表後、数本観た内、●印の二本「バッド・ジーニアス」(タイ映画)と、趣里主演の「生きてるだけで、愛。」(本谷有希子原作)を次点に追加した。
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寝ても覚めても
濱口竜介の商業映画第一作『寝ても覚めても』(2018)が、雑誌『ユリイカ』で特集されるなど、今の若手監督では最も注目すべき作家だろう。2015年に公開された『ハッピーアワー』は、素人俳優がロカルノ映画祭で4人が主演女優賞を獲得したことで話題となって。小生は遅れて翌2016年に5時間17分の大長編を見た感想を拙ブログ(2016−04−07)で言及した。映画は90分前後であるべきことなど苦言を呈しておいた。
さて『寝ても覚めても』は、東出昌大が麦と会社員亮平の二役を演じている。朝子(唐田えりか)は麦と運命的な出会いより一瞬で恋に落ちる。しかしながら、麦はある日突然消息を絶つ。
東京に出て喫茶店で仕事をする朝子は、コーヒー出前サービスで会社員亮平に出会う。麦に瓜二つの亮平に関心を持つ。同様に亮平(東出昌大)も彼女に惹かれる。
亮平と朝子・二人の出会いから大きく発展する契機となるのは、「牛腸茂雄写真展」であった。「双子の女の子」の写真に惹かれる朝子。
映画の梗概を記すことはしない。瓜二つの男二人の間で揺れる一人の女性、朝子の8年間の生活。
蓮實重彦は以下のように評価している。
向かいあうこともなく二人の男女が並び立つラスト・ショットの途方もない美しさ。しかも、ここには、二十一世紀の世界映画史でもっとも美しいロングショットさえ含まれている。濱口監督の新作とともに、日本映画はその第三の黄金期へと孤独に、だが確実に足を踏み入れる。
ブルーを基調とした映像が、美しい。
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工藤 庸子編『論集 蓮實重彦』(羽鳥書店,2016)に、若手映画監督である濱口竜介と三宅唱が寄稿している。
いわば同時代的に蓮實重彦に影響を受けた世代ではなく、遅れてきた蓮實読者である。
その二人が2018年に、柴崎友香原作『寝ても覚めても』と、佐藤泰志原作の『きみの鳥はうたえる』を映画化した三宅唱監督。二人に共通するのは「画面」の映画だ。青春時代のある種の雰囲気。ブルーを基調とする色彩。
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三宅唱『きみの鳥はうたえる』(2018)は、ひと夏が過ぎたあと、染谷将太の回想のことばで始まる。僕こと柄本佑は、書店のアルバイトで石橋静河と出会い、親密な関係になる。同居者である染谷将太との三角関係。青春というある種ほろ苦い、もどかしさが、映像に切り取られている。
ラストショットは、『寝ても覚めても』と『きみの鳥はうたえる』の二作とも唐突に終わり、続きへの余韻が漂う。唐突といえば、『寝ても覚めても』の中で、瀬戸康史が唐田えりかの友人・山下リオが出演しているチェーホフの戯曲『三人姉妹』の演技を批判する、映画の中で浮いてるシーンがある、演劇批評のシーンの挿入の意図は呑みこみにくい。
さて、この作品にも蓮實重彦の評がある。
窮屈そうな二段ベッドで柄本佑としなやかに愛を交わした石橋静河が、Tシャツをまとって真っ赤なトマトを頬ばっていると、いきなり同居人の染谷将太が姿を見せ、初めましてと鄭重な挨拶を送る。この美しい瞬間に成立するあぶなっかしいトリオの行方から、誰も目が離せまい。上映時間があと七分半短ければ、真の傑作となっただろう。
上映時間にこだわっている。106分という長さから蓮實重彦の言う7.5分を引くと、98.5分が最適な長さということになる。ちなみに、『寝ても覚めても』は119分。小生から見れば、どちらもそれなりの長さを必要としたのであろう。120分以下であることは許容範囲である。
- 作者: 蓮實重彦
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- 作者: 蓮實重彦
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蓮實重彦との出会いは二人とも、東大総長時代で映画から距離を置いていた時期であり、総長の式辞中に眠った経験を持つ濱口竜介と、『村上龍対談集』で蓮實重彦の映画についての語りに惹かれた三宅唱。
『論集 蓮實重彦』には、蓮實の立教大学「映画表現論」講義の第一世代である周防正行、黒沢清、青山真治などは寄稿しいていない。いわば第二世代の登場ということか。映画を撮ることの困難さを知る新世代が現れたことが今年の収穫であった。
濱口竜介は、「遭遇と動揺」(p547『論集 蓮實重彦』)でつぎのように指摘している。
蓮實重彦は稀大の聞き手でもあった。・・・ゴダールからシュミット、アレキサンドル・トローネから、中古智から厚田雄春から驚きとともに(「そんなことを指摘されたのは初めてです!」)言葉の漏れ出すあの瞬間。
小津安二郎の撮影監督:厚田雄春や、成瀬巳喜男の美術担当:中古智、数多くの名作の美術設計をしたアレクサンドル・トローネル*1などの名前は、すべて蓮實重彦の書物から教えれたことを思い出す。
- 作者: 蓮實重彦
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胃弱・癇癪・夏目漱石
漱石研究には、作家論、作品論等、いわば本流の作家研究があり、一方、漱石の私生活や恋愛などに主体的アプローチする批評がある。
胃弱・癇癪・夏目漱石 持病で読み解く文士の生涯 (講談社選書メチエ)
- 作者: 山崎光夫
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山崎光夫著『胃弱・癇癪・夏目漱石』(講談社,2018)は、漱石の病気に注目し、作品を排除したかたちで漱石像に迫る論考である。
まず漱石の根底に、<ミザンスロピック(厭世)病>と規定する。多病才人。宿痾は胃潰瘍、他に神経衰弱、痔疾、糖尿病などがある。要は多病の漱石が、自分の身体を<病気>と自覚していたか、である。
あらかじめ私見を述べれば、柄谷行人の漱石論が最後の本格的論考であった。
- 作者: 柄谷行人
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が根底にあり、作品が二重に分裂していると解釈する柄谷氏の論考を超える漱石論は出ていない。従って、あまた書かれた漱石論に、新しい見解はないと看る。
とすれば、漱石論以外の側面的アプローチしか残されていない。
- 作者: 中島国彦
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- 作者: 長谷川郁夫
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中島国彦著『漱石の地図帳』(大修館書店,2018)も、地理・地形から漱石作品を解読している。長谷川郁夫著『編集者 漱石』(新潮社,2018)は、編集者としての漱石の生涯を細部にわたり読み込んでいる。
さて、山崎光夫著『胃弱・癇癪・夏目漱石』は、作品には深く言及せず、もっぱら病気と健康から漱石の生涯を追っている。漢方に精通しているらしい著者によれば、「変人医者が生き方のお手本」は、自らを<変人>と規定する漱石に漢方を利用していれば、健康的にはより良い人生を送れたかのような思いがある。しかし、明治以降西欧化が全てにおいて、事後的にあれこれ指摘しても余談にしか読めない。
唯一、なるほどと感心したのは、『門』執筆後に長与胃腸病院に入院後、退院にあたり転地療養を勧められ、修善寺の吐血に至るわけだが、著者はその原因は「温泉にある」と明記している点だ。
漱石の胃潰瘍は急性の炎症性疾患と考えられ、また、退院したばかりでもあり温泉は禁忌だった。逆に胃潰瘍を悪化させるので、温泉に浸かってはならなかった。漱石の「どうしても湯が悪いように思ふ」との認識は大正解である。(p243)
さらに、山崎氏は強調する。
繰り言めくが、わたし(筆者=山崎光夫)は、もし漱石が胃潰瘍の初期の段階から漢方療法を受けていたら、胃潰瘍はかなり制圧されたのではないかと思っている。漢方は内科系疾患に強い。東洋医学は数千年の伝統を有し、歴史の重みに堪えて残っていて、人の病を癒す有効な医学である。(p288)
漱石は死の直前、真鍋嘉一郎に「死ぬと困るから」と言った話は有名である。
「則天去私」の漱石が、「死ぬと困るから」とはの謎を解くには,漱石最晩年の「断片」からの言葉が参考になる。
生死ハ透脱スベキモノナリ回避スベキモノニアラズ。 毀誉モ其通リナリ。(大正四・五年ころ)
全編、「病気」という切り口から、解説した漱石情報といえるだろう。
しかしながら、テキスト以外から作家にアプローチするのは、個人的な思い込みや逆転の発想があるのかも知れない。漱石が近代日本文学の頂点だから、余計に周辺からみる評伝が多くなる。漱石は10年以上、読み続けているが、関係文献の多さに辟易するのが本音だ。誰もが、個人的な「漱石像」を持てばそれで良い、というのが最近の心境となった。
外国文学の場合は、多くの場合、テキストのみで十分読むことができるのを考えれば、情報の多さもテクストから限りなく遠ざかるといえるのではないか。このところ19世紀ロシア文学を読んでいるが、テキストと註釈程度で十分だ。研究者は別だろうが・・・
今夜はひとりぼっちかい?日本文学盛衰史戦後文学篇
- 作者: 高橋源一郎
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- 作者: 高橋源一郎
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高橋源一郎著『今夜はひとりぼっちかい?‐日本文学盛衰史戦後文学篇』(講談社,2018)は、十数年前の『日本文学盛衰史』(講談社,2001)の続編である。「戦後文学篇」の副題がある。
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まず冒頭、映画・原一男監督『全身小説家』を学生に見せている。全身小説家とは、埴谷雄高が井上光晴を命名したのだが、ここで取り上げられる、戦後派作家及び周辺の批評家の名前が、カタカナで記述される。タケダ・タイジュンのように。
それを漢字に直すと、武田泰淳、野間宏、島尾敏雄、安岡章太郎、中川与一、宇野浩二、尾崎一雄、小林秀雄、原民喜、勝本清一郎、三好達治、唐木順三、丸山眞男、倉田百三、本多秋五、桑原武男、佐多稲子、平野謙、椎名麟三、徳田秋声、白井浩司、瀧口修造、石川達三、竹内好、梅崎春生、田村泰次郎、中島敦、保田與重郎、中野重治、安部昭、中村光夫、山本有三、亀井勝一郎、蓮田善明、杉浦民平、高見順、花田清輝、羽仁五郎、嘉村磯多、安部公房、林房雄、福田恒存、石坂洋二郎、藤枝静男、石川淳、堀口大學、牧野信一、織田作之助、伊藤整、武者小路実篤、室生犀星、檀一雄、小田切秀雄、上林暁、森有正、吉田健一、竹山道雄、田中秀光、米川正夫、渡辺一夫、中村真一郎、福永武彦、田宮寅彦、八木義徳、大岡昇平、磯田光一、河上徹太郎、堀田善衛、長谷川四郎・・・
戦後文学というより、戦前から生き残った文学者たち、評論家たちの、高橋源一郎の記憶にあるままお経のように唱えた名前である。
荒正人、遠藤周作、三島由紀夫、清岡卓行、寺田透、秋山駿、吉行淳之介、山川芳夫、中野好夫、坂口安吾、川崎長太郎、桶谷秀昭、村上一郎などを付け加えてもいいと思うが。他にも忘れているかも知れない。
「文学なんてもうありませんよ」
ロックンロール内田裕也、パンク、映画『SRサイタマののラッパー』から、石坂洋二郎の作品まで、ツイッター上で、ブンガクを語る。
ブンガクとは皆で読む場であった。みんなが参加して盛り上がる文脈=場があった。
3.11を「戦災に遇う」と表現するタカハシさん。
エピローグは、「なんでも政治的に受けとればいいというわけではない」と題され、以下の終焉を迎える。
福島第一原発の正門
正門まで10メートル。我々は立ち止った。「機械」をセットしたのは相棒だった。あちらからもこちらからも警官がやってきた。我々は正門を背に「機械」に向かって手をあげ、こういった。
「はい、笑って」
「おかしくないんだから笑えないんだけど」
「こうって、『いつかなりたいお金持ち〜!』」
「いやだね」
「じゃあピース?」
カシャッー
これって近代文学の終わり、かな。そういえば、柄谷行人は『近代文学の終わり』(インスプリクト、2005)で言及していた。
- 作者: 柄谷行人
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近代文学は、鴎外、漱石に始まり、荷風、芥川龍之介、太宰治等を経て現代文学・村上春樹に至る。そのあたりが教科書的・一般的認識であり、戦後文学について触れるひとが居なくなっている。
ツイッターやインスタなどのSNSメディアが、皆でかかわる場であり文脈となってしまった。ことの是非はさておき、喪失、あるいは忘却されることは歴史の必然だろうか。
■漱石関連本について
長谷川郁夫著『編集者漱石』(新潮社,2018)は、「編集」をキーワードにしているが、漱石本が多い中で久々の本格的・重厚な評伝となっている。本文二段組、354頁は読みがいがある。編集者・子規との関わりから叙述される。著者は小沢書店経営者として著名。
- 作者: 長谷川郁夫
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序文にて、「私がみるところ、日本の近代文学において最初の、そして最高の文学者=編集者は夏目漱石である」と宣言している。現在読書中であり、中島国彦『漱石の地図帳』(大修館書店,2018)および山本芳明『漱石の家計簿』(教育評論社,2018)と併せて覚書をUPしたい。
- 作者: 中島国彦
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- 作者: 山本芳明
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それにしても、いまなお漱石本が多いということは、戦後文学は読まれていないことの間接的証明だろうか。
原民喜
梯久美子『原民喜ー死と愛と孤独の肖像』(岩波新書,2018)を読む。梯久美子さんの、対象の選択の見事さと資料収集の適確さに、読者は魅了される。前回の、『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮社,2016)に続き、ノンフィクション作家の面目躍如たる、姿勢に圧倒される。
- 作者: 梯久美子
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原民喜の作品は、『夏の花』を随分前に読んだだけだが、原爆・被爆体験の凄絶さと描かれる世界の静謐さに感銘を受けたものだが、その背後にある原民喜の生活にまで思いが到らなかった。梯久美子さんの『原民喜』が再び、読書への意欲をかきたてる。
梯久美子さんは、
本書を著すために原の生涯を追う中で、しゃにむに前に進もうとする終戦直後の社会にあって、悲しみのなかにとどまり続け、嘆きを手放さないことを自分に課し続けた原に、純粋さや美しさだけでなく、強靭さを感じるようになっていった。(274頁)
と「あとがき」に記している。
原民喜さん あなたは死によってのみ生きていた類ひまれな作家でした そして あなたはさらに その最後に示した一つの形ち 書かれざる文字によって 私達にまた 悲しみの果てからほとばしりでるひとつの 訴へをなしたごとくです (21頁)
『夏の花』は、『原子爆弾』が原題であり、「近代文学」掲載の予定であったが、検閲を回避するために「三田文学」に、改題されて掲載された。冒頭は妻の墓を訪れる光景から始まるが、被爆の記憶は一行あけて二段落目から記述される。
- 作者: 原民喜
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私は街に出て花を買うと、妻の墓を訪れようと思った。ポケットには仏壇からとり出した線香が一束あった。八月十五日は妻にとって初盆にあたるのだが、それまでこのふるさとの街が無事かどうかは疑わしかった。恰度、休電日ではあったが、朝から花をもって街を歩いている男は、私のほかに見あたらなかった。その花は何という名称なのか知らないが、黄色の小瓣の可憐な野趣を帯び、いかにも夏の花らしかった。
炎天に曝されている墓石に水を打ち、その花を二つに分けて左右の花たてに差すと、墓のおもてが何となく清々しくなったようで、私はしばらく花と石に視入った。この墓の下には妻ばかりか、父母の骨も納っているのだった。持って来た線香にマッチをつけ、黙礼を済ますと私はかたわらの井戸で水を呑んだ。それから、饒津公園の方を廻って家に戻ったのであるが、その日も、その翌日も、私のポケットは線香の匂いがしみこんでいた。原子爆弾に襲われたのは、その翌々日のことであった。私は厠にいたため一命を拾った。八月六日の朝、私は八時頃床を離れた。前の晩二回も空襲警報が出、何事もなかったので、夜明前には服を全部脱いで、久し振りに寝間着に着替えて睡むった。それで、起き出した時もパンツ一つであった。妹はこの姿をみると、朝寝したことをぶつぶつ難じていたが、私は黙って便所へ這入った。
それから何秒後のことかはっきりしないが、突然、私の頭上に一撃が加えられ、眼の前に暗闇がすべり墜ちた。私は思わずうわあと喚き、頭に手をやって立上った。嵐のようなものの墜落する音のほかは真暗でなにもわからない。手探りで扉を開けると、縁側があった。その時まで、私はうわあという自分の声を、ざあーというもの音の中にはっきり耳にきき、眼が見えないので悶えていた。しかし、縁側に出ると、間もなく薄らあかりの中に破壊された家屋が浮び出し、気持もはっきりして来た。それはひどく厭な夢のなかの出来事に似ていた。・・・(『夏の花』7−9頁)
『夏の花』の読編『廃墟から』は、被爆体験の続きが記され、『壊滅の序曲』には、1947年4月に広島に戻った正三が、家族とともに8月6日8時15分の40時間前までが、綴られる。
暑い陽光が、百日紅の上の、静かな空に漲っていた。……原子爆弾がこの街を訪れるまでには、まだ四十時間あまりあった。(『夏の花』114頁)
『夏の花』三部作は「原爆被災時のノート」に記された
我ハ奇蹟的ニ無傷
ナリシモ、コハ今後生キノビテ
コノ有様ヲツタヘヨト天ノ命
ナランカ
の思いで、<妻の死>とともに、書き残すべき大事なこととなり、『原子爆弾』(『夏の花』)に結晶したのだった。
原民喜の文章は、透明感に溢れている。あまりにも清らかなこころ。亡妻への愛、とりわけ妻・貞恵の死以後は、全ての文章・詩は妻に捧げられている。「美しい死」というものがあるとすれば、それは原民喜の自殺にほかならない。
- 作者: 原民喜
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詩『原爆小景』から引用する。
コレガ人間ナノデス
コレガ人間ナノデス
原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
肉体ガ恐ロシク膨脹シ
男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル
オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ
爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ
「助ケテ下サイ」
ト カ細イ 静カナ言葉
コレガ コレガ人間ナノデス
人間ノ顔ナノデス
永遠のみどり
ヒロシマのデルタに
若葉うづまけ死と焔の記憶に
よき祈よ こもれとはのみどりを
とはのみどりをヒロシマのデルタに
青葉したたれ
原民喜の詩や小説を前にして、凡人が発する言葉もない。
- 作者: 原民喜
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/06/11
- メディア: 文庫
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『苦しく美しい夏』ほか、『美しき死の岸に』では、妻への愛がかたられる。
ある朝、彼は寝床で、隣室にいる妻がふと哀しげな咳をつづけているのを聞いた。何か絶え入るばかりの心細さが、彼を寝床から跳ね起させた。はじめて視るその血塊は美しい色をしていた。それは眼のなかで燃えるようにおもえた。妻はぐったりしていたが、悲痛に堪えようとする顔が初々しく、うわずっていた。妻はむしろ気軽とも思える位の調子で入院の準備をしだした。悲痛に打ちのめされていたのは彼の方であったかもしれない。妻のいなくなった部屋で、彼はがくんと蹲り茫然としていた。世界は彼の頭上で裂けて割れたようだった。やがて裂けて割れたものに壮烈が突立っていた。(『原民喜戦後全小説』209頁)
「世界は彼の頭上で裂けて割れたようだった。やがて裂けて割れたものに壮烈が突立っていた」とは、のちの被爆体験が重なる。
原民喜の作品は、岩波文庫の二冊『小説集 夏の花』『原民喜全詩集』、講談社文芸文庫版『原民喜戦後全小説』ほかがあるが、「青空文庫」に多くの作品が電子化されている。
梯久美子の作品
- 作者: 梯久美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
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- 作者: 梯久美子
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充たされざる者
2017年ノーベル文学賞受賞者、カズオ・イシグロ。彼の作品は、映画化された『日の名残り』と『私を離さないで』二本を観ただけであった。ノーベル文学賞受賞という栄誉に輝いている作家は読みたくない。しばらくの猶予を置いて、『日の名残り』から読み始める。休暇を取った老執事の旅を通しての回想録。読み進めるとその世界に引きずり込まれる。淡々と語られる語り口は、厳格なイギリス執事そのもの。しかしながらその語り手は信頼できるのか?
続いて映画化された『わたしを離さないで』は、ディストピア小説だ。「残酷なビルドゥングスロマン」(豊崎由美)という批判もある。読ませる内容は、全貌が視えないままに終える。
最初の長編『遠い山なみの光』は、戦後の長崎と主人公が渡英した後のイギリスが舞台。語り手のエツコは、長崎時代の回顧と、イギリスの現在を交錯させながら、自殺した長女ケイコ、大学から帰省した次女ニキとの会話から、長崎時代の隣人、サチコとマリコの母娘を回想する。最初の結婚相手の父オガタの儒教的価値観が、戦争協力者として教え子から糾弾される。
第二作『浮世の画家』は、戦前戦争協力画を描いたオノが語り手。戦後にオノが置かれた状況。節子、紀子など小津安二郎作品に頻用される名前。
日本の小説を翻訳したかのような初期の二作品。
三作目が『日の名残り』で、本作でブッカー賞受賞。名声を得る。
名声を得たイシグロは、『充たされざる者』で著名ピアニストであるライダーが語り手となる。賛否両論のある本作。町の住民たちが親しげにライダーに話かける。彼らすべてに対応し行くことに、読者は苛立ちを感じるだろう。実際、途中で読むのを止めようかと何度も思った。しかし、木曜の夕べに開催される演奏会に向けライダーは、準備できなまま、迷路にさまよう姿は、カフカの『城』を想起させる。
宿泊するホテルの老ポーター・グスタフ、娘のゾフィー、孫のボリスがあたかも、ライダーの家族、すなわち妻、子どもに対するようにふるまう。現代音楽を演奏しようとするステファン、ミス・コリンズとの関係を修復するために指揮者として復帰を試みるブロツキーは、ライダーの青年期、老年期の暗喩とも読み取れる。
『わたしたちが孤児だったころ』は、上海で育ったクリストファー・バンクスが、父母の失踪により、英国に戻る。父母を探索するために探偵になる。前半部をリアリズム、後半をバンクスの感情に沿った夢幻的な世界を描き出した。ビルドゥングスドラマと探偵小説のずれとも読める。
短篇集『夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』は、いずれも音楽好きを自認するカズオ・イシグロの作品らしく、音楽に関する嗜好の蘊蓄がそれとなく散りばめられる。と同時に老年期の夫婦関係の在り方が模索される。文章も魅力的だし、絶品揃い。
以上が、「ノーベル文学賞」の対象作品である。受賞前に『忘れられた巨人』が刊行されたが、これはノーベル賞対象外らしい。
『忘れられた巨人』は、アーサー王以後のブリテン島を舞台に、アクセルとベアトリス老夫婦の冒険の旅物語としてはじまる。ブリトン人とサクソン人の闘争と虐殺の歴史は、雌竜によって記憶を忘却させられた状態。老夫婦は息子を探す旅に出る。途中で、サクソン人戦士ウィスタン、青年エドウィンに出会う。アーサー王は魔術師マーリンに命じて雌竜クリエグの息を国全体を覆う霧とし、人々の記憶を奪ったのだった。アーサー王の甥ガウェイン卿は、雌竜をそのままの状態に保つべく、戦士ウィスタンと闘う。記憶を巡る、あるいは記憶の回復を巡る神話的物語だ。語り手も、老夫婦から、ガウェインや船頭が語り手となる。
ファンタジー小説という趣向をどう受け止めるか、民族対立の寓意でもある『忘れられた巨人』では、アクセルが姫と呼ぶベアトリスの老夫婦が交わす会話の温かさに心なごむが、一方、以前の作品とは異なる文明批評が加わる。
さて、カズオ・イシグロのベスト作品は、通常ブッカー賞受賞作『日の名残り』か、臓器提供者として生まれた少年少女を描いたディストピア小説『わたしを離さないで』が挙げられる。しかし、私は、『充たされざる者』を現在のベストとしたい。読み手をてこずらせる前半と、カフカ的様相を呈する後半の融合と不条理感が突出する。予測不能な展開に魅せられる。
カズオ・イシグロについて、「信頼できない語り手」という表現が用いられる。とりわけ『日の名残り』の老執事は、つかえた貴族がナチスに協力していたにも係わらず、尊敬の念を失っていない。貴族を賛美する言葉が綴られている。もちろん、イシグロ氏に限らず、どの作家にとっても「私」が語る作品は、捏造あるいは欺瞞に満ちている可能性がある。語り手の信頼性という点では、たしかにカズオ・イシグロ作品に顕著であることは確かだろう。
まあしかし、読ませる作品を書いているということでは、ベストセラー作家であると言えよう。
カズオ・イシグロは読み始めると止められない。
映画化作品
[rakuten:book:15815415:detail]犬ヶ島
ウェス・アンダーソン監督、パペットアニメーション『犬ヶ島』(Isle of Dogs,2018)には、映画作りの巧さが随処に見られ、感動アニメの部類に入る。ベルリン銀熊賞受賞作品。
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コンピュータグラフィックのアニメが多い中で、手作り人形によるコマ撮り映画は、貴重な挑戦でもある。一コマづつ撮影のため、制作に4年を費やしている。本編には、情報量が多く単純なストーリに複雑なメッセージやオマージュが混入されている。まず、黒澤明の50〜60年代の映画による日本をイメージした舞台設定。今から20年後の未来を描くというスタイル。
メガ崎市では、小林市長が独裁制権力を有し、「ドッグ病」という奇病のためイヌを隔離する。その犬ヶ島へ、少年アタリが愛犬「スポッツ」を探しにやってくる。5匹のイヌが少年に協力することになる。
一方、「ドッグ病」の治療薬を開発していた渡辺教授が軟禁される。
メガ崎高等学校の交換留学生トレイシー・ウォーカーの小林市長排斥運動を起こし、治療薬ワクチンを所有するオノ・ヨーコからワクチンを受取り、犬ヶ島のアタリ少年やイヌ達を応援する。
何よりアニメーションの原型とも形容される懐かしさと、黒澤明的正義が貫徹していることだろう。
ウェス・アンダーソンは、『ザ・ロイヤル・テンネンバウムズ』(2001)、『ライフ・アクアティック』(2004)、『ダージリン急行』(2007)、『ファンタスティックMr.FOX』(2009)、『ムーンライズ・キングダム』(2012)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)と、傑作、佳作を作り続けている。
『ザ・ロイヤル・テンネンバウムズ』は、ジーン・ハックマンを家長とする家族の物語。
『ライフ・アクアティック』は、ビル・マーレイの海洋冒険家チームによる水中撮影。
[rakuten:book:16169002:detail]
『ダージリン急行』、舞台はインド北西部を走るダージリン急行。オーウェン・ウイルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマンの三兄弟によるファンタジー的快作。3人乗りバイクシーンがユーモアを誘う。
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『ファンタスティックMr.FOX』は、ロアルド・ダール原作を、ストップモーションアニメ。
『ムーンライズ・キングダム』は、群像恋愛コメディ。少年・少女の逃避行物語。
[rakuten:book:17454566:detail]
『グランド・ブダペスト・ホテル』は、3つの過去と現在が入れ子状態になっているスタイリシュな映像。レイフ・ファインズを伝説のコンシェルジェとし、多彩な人物が交錯する、ウェス・アンダーソンの最高傑作。
ウェス・アンダーソン作品には、「アンダーソン・ファミリー」とも言うべきキャスティングが配されている。
オーウェン・ウイルソン、エイドリアン・ブロディ、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、フランシス・マクドーマンド、 F・マーリー・エイブラハム、ティルダ・スウィントン、アンジェリカ・ヒューストン、ハーヴェイ・カイテル、カーラ・ヘイワードなど。
今回の『犬ヶ島』には、「アンダーソン・ファミリー」がほぼ総出演しており、他にもスカーレット・ヨハンソン、オノ・ヨーコ、グレタ・ガーウィグ、渡辺謙、夏木マリなど豪華俳優が協力している。ちなみに、常連のオーウェン・ウイルソンは制作に回っている。
参考のために、『犬ヶ島』公式HPより,「ストーリー」を以下に引用する。
今から20年後の日本。メガ崎市ではドッグ病が蔓延し、人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を“犬ヶ島”
に追放すると宣言する。数か月後、犬ヶ島では、怒りと悲しみと空腹を抱えた犬たちがさまよっていた。その中に、
ひときわ大きな5匹のグループがいる。かつては快適な家の中で飼われていたレックス、22本のドッグフードのCMに
出演したキング、高校野球で最強チームのマスコットだったボス、健康管理に気を使ってくれる飼い主の愛犬だった
デュークだ。そんな元ペットの4匹に、強く生きろと喝を入れるのが、ノラ犬だったチーフだ。ある時、一人の少年が小型飛行機で島に降り立つ。彼の名はアタリ、護衛犬だったスポッツを捜しに来た小林市長の養子だ。事故で両親を亡くしてひとりぼっちになり、遠縁の小林市長に引き取られた12歳のアタリにとって、スポッツだけが心を許せる親友だった。スポッツは鍵のかかったオリから出られずに死んでしまったと思われたが、それは“犬”違いだった。何としてもスポッツを救い出すと決意するアタリに感動したレックスは、伝説の予言犬ジュピターとオラクルを訪ねて、教えを請おうと提案する。一方、メガ崎市では、小林政権を批判し、ドッグ病の治療薬を研究していた渡辺教授が軟禁される。メガ崎高校新聞部のヒロシ編集員と留学生のウォーカーは、背後に潜む陰謀をかぎつけ調査を始める。アタリと5匹は、予言犬の「旅を続けよ」という言葉に従うが、思わぬアクシデントから、アタリとチーフが仲間からはぐれてしまう。少しずつ心を通い合わせ始める一人と一匹に、さらなる冒険が待っていた─。
ユリイカ臨時増刊号(6 2018(第50巻第7号)) 詩と批評 総特集:〈決定版〉ウェス・アンダーソンの世界ー『犬ヶ島』へよ
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ウェス・アンダーソンは、雑誌『ユリイカ』で特集されるのは、2014年6月に次いで、『犬ヶ島』が2度目となることを付言しておきたい。
■追加(2018-06−24)
黒澤明へのオマージュというのは、小林市長が『天国と地獄』の三船敏郎役をイメージしてること、犬たちが揃って並ぶシーンには、『七人の侍』のテーマ音楽を使用していることなどから。
また、アンダーソン監督は、「今作を手掛ける上で、宮崎駿監督作品の静寂と自然の描写に影響を受けた」と告白してる。必見!『犬ヶ島』
*ウェス・アンダーソン作品関係
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ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル Popular Edition [ マット・ゾラー・サイツ ]
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