白秋望景
川本三郎著『白秋望景』(新書館,2012)。
川本氏の著作は、常に細部を丁寧に記述されるので、読みやすい。何故いま「北原白秋なのか」、それは、白秋が筆一本で生活してきたことへの著者の共感に関係しているようだ。
- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2012/01/26
- メディア: 単行本
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本作が、第23回伊藤整文学賞・受賞の報が入る。
作家の評伝では『荷風と東京『断腸亭日乗』私註』(都市出版,1996)で読売文学賞、『林芙美子の昭和』(新書館,2003)では、毎日出版文化賞と桑原武夫学芸賞のW受賞を果たしている。
この、荷風・林芙美子・北原白秋の評伝は、川本氏の評伝三部作と言ってもいいだろ。
- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
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舟を編む
2012年本屋大賞を受賞した三浦しをん著『舟を編む』(光文社,2011)は、辞書の編纂をテーマとする「職業小説」であり、10数年を作品の中で描ききっている傑作であった。出版者における辞書編纂部の組織的位置や、言葉へのこだわりなど、このような小説は管見の限りでは嚆矢と言えるのではないか。
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/09/17
- メディア: 単行本
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他にも、三上延著『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』(アスキーメディアワークス,2011)は、古書店を舞台に、様々な名作を取り上げ、ミステリー風に作品を解説する。
コミックだが、玉川重機著『草子ブックガイド1』(講談社,2011)は、小説の名作に加えて、学校図書館の女性司書教諭が、生徒にブックトークをさせる設定など、本を紹介するコミックとして、良質の内容になっている。
- 作者: 玉川重機
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/23
- メディア: コミック
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モノとしての本が持つ、記憶と本を媒介するのは、電子書籍では難しいだろうと思わせる。いずれも本を介して、主人公が成長するビルドゥングス・ロマンとなっている。
眼に映る世界
眼に映る世界―映画の存在論についての考察 (叢書・ウニベルシタス)
- 作者: スタンリーカヴェル,Stanley Cavell,石原陽一郎
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2012/04/01
- メディア: 単行本
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スタンリー・カヴェル著、石原陽一郎訳『眼に映る世界ー映画の存在論についての考察』(法政大学出版局、2012)は、ドゥルーズ『シネマ』と双璧をなす哲学者による映画論というキャッチコピーに惹かれて読み始めた。
「視角と音」〜「類型的人物、シリーズ、ジャンル」の第2章から5章までが、映画の教科書に収録されていると訳者解説に記述されている。
この部分だけ読めば、カヴェルはパノフスキーやアンドレ・バザンを援用しながら、絵画・写真と映画の差異に注目し、メディウムとしての映画をどのように規定すればいいのかを逡巡しながら言及している。
アメリカの歴史は、200年を超えるが、欧州に較べるときわめて短い。そのためハリウッド映画が、哲学倫理上の指標となり得るとして、類型化された人物、ジャンルの中から規範を見出そうとしているようだ。
なお『眼に映る世界』は、現在読書継続中である。