戦後文学エッセイ選


松本昌次主催の出版社・影書房は『戦後文学エッセイ選』全13巻という地味な企画があり、松本氏はこの企画について次のように記している。

この〝選集〟に収録させていただく戦後文学者の方がたはわたしがかつて未来社の編集者として在籍(一九五三年四月〜八三年五月)しました三十年間、つづいて小社でその著書の刊行にあたって直接出会うことができた方がたにのみ限らせていただくということです。・・・(中略)・・・本選集の刊行をきっかけに、わたしが直接お会いしたり著書を刊行する機会のなかった方がたをも含めての、戦後文学の新たな〝ルネサンス〟が到来することを心から願って止みません。(影書房HPより)



最新刊として第8回配本の『長谷川四郎集』がある。その冒頭に「炭鉱ビスーソ連捕虜記」が置かれている。長谷川四郎は、シベリアの捕虜収容所を4年半にわたり転々とした。帰国した長谷川氏は、『シベリア物語』を書いた。


長谷川四郎 鶴/シベリア物語 (大人の本棚)

長谷川四郎 鶴/シベリア物語 (大人の本棚)


戦後は終わっていない。イーストウッドによって映画化された「硫黄島」が注目されているが、大東亜戦争とは何であったのか、「未清算の過去」として引きずっていると言わねばなるまい。明らかに侵略戦争であり、加害者であると同時に被害者でもあった多くの死者たちの「喪の作業」は未だ終わっていない。ということは「戦後文学」も終わっていないのだ。