空には本



寺山修司といえば、第一歌集『空には本』(1958)の「故郷喪失」の「壱」

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや


があまりにも有名である。また、歌集『田園に死す』は、同名の映画に引用されていて、その天才ぶりが如何なく発揮されている。


で、寺山修司の映画ベスト3は、

  1. 田園に死す』(1974)
  2. 草迷宮』(1979)
  3. 『さらば箱舟』(1982)

となった。


寺山修司は、死病を抱えながら生きてきた。遺稿「懐かしのわが家」は、次のような詩だ。

昭和十年十二月十日に
ぼくは不完全な死体として生まれ
何十年かかゝって
完全な死体となるのである
そのときが来たら
ぼくは思いあたるだろう
青森市浦町字橋本の
小さな陽あたりのいゝ家の庭で
外に向かって育ちすぎた桜の木が
内部から成長をはじめるときが来たことを

子供の頃、ぼくは
汽車の口真似が上手かった
ぼくは
世界の涯てが
自分自身の夢のなかにしかないことを
知っていたのだ


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寺山修司 (ちくま日本文学全集)

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死と存在については、明日、中島義道『どうせ死んでしまう・・・』(角川書店)を手がかりとして触れることにする。