草迷宮
遅ればせながら、気になっていた中篇映画『草迷宮』(1979)を観た。
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2003/07/25
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原作は泉鏡花だが、内容的には、寺山修司の自己言及的作品になっている。少年役は三上博史、青年役を若松武。青年は、母の歌っていた手毬唄の歌詞の由来を求めて旅を続けている。少年は、母=新高恵子に強圧的に束縛されている。少年の住む母屋の隣に、謎の女性が囲われていて、少年を誘惑しようとするが、母は強く、係わらないように威圧する。少年と青年の世界が次第に交錯してゆき、幻想風、アヴァンギャルド的、色彩と映像で、観る者に混乱をもたらす。
この映画から感じとれることは、母親の影響の強さである。『田園に死す』でもそうだったが、寺山は明らかに、母親コンプレックスであった。それは、ラスト近く、母が「ほら、お前をもう一度妊娠してやった」という台詞に象徴されている。描かれる世界は、虚構あるいは捏造された自己言及であるが、その根底には、母にたいするコンプレックスがあることは確かだ。