丸山眞男話文集続3


みすず書房から『丸山眞男話文集・続3』が、2014年11月21日付けで刊行された。その中に丸山眞男を囲む「楽しき会」の記録が、録音から文章化されている。


丸山眞男話文集 続 3

丸山眞男話文集 続 3


1990年5月に開かれた「楽しき会」には、丸山眞男のほか安東仁兵衛、石川真澄、石見隆夫、筑紫哲也が参加している。


仮に付されたタイトルは「「脱亜論」、日本浪漫派、湾岸危機、「日韓併合」、「集団的自衛権」の欺瞞性」」とされている。


2014年7月1日に、安倍政権は国会の審議を経ることなく、「集団的自衛権」の行使容認を閣議決定した。拙ブログでも、この閣議決定は「日本国憲法」に違反していることを指摘したが、丸山眞男は、1990年の上記「楽しき会」で、以下のように述べている。

もうひとつ生臭い問題で言いたかったのは、「集団的自衛権」という言葉は断乎否定すべきだ、ということです。国際連盟国際連合も安全保障というのは一般的安全保障なんです。地域的安全保障というのは軍事同盟の別名なんです。軍事同盟を美化する言葉です。地域的安全保障というものはあり得ないの。つまり、世界の警察なんです。・・・(中略)・・・国連には地域的安全保障という言葉はないんです。・・・地域的安全保障というのは、主権国家の軍事同盟を体よく言い換えた言葉にすぎない。(p283)


と「集団的自衛権」の欺瞞性について述べている。また

集団的自衛権」と言う言葉を使って、あたかも国連の是認を経たかの如く言うのは、言葉の欺瞞なんだな。国連が決めているのは一般的安全保障だけなんです。国連の規約をよく読めば分かります。(p284)


と国連の規約に言及している。


さて、国連憲章の冒頭に以下の文が記載されている。

われら連合国の人民は、 われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、 これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。


問題は、第51条の記載内容である。

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。(第51条)


安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」に、集団的自衛権を行使した場合、「この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。」とある。


実際、国連で集団的自衛権を行使した事例として5例ある。(ウィキペディアより)


これらの実例について云々する前に、「集団的自衛権」行使が「日本国憲法」に違反しているという重大なる事実だ。