図書大概


とくに、大沼晴暉『図書大概』(汲古書院,2012.11)は、確かに漢籍や和本に関する、書誌学的な解説本だが、武藤氏が記しているように、「図書の調べ方」は必読箇所である。その前に「刊、印、修」の違いは、洋装本でいえば、「刊」は「版次」、「印」は「刷次」に相当するわけだが、「版」と「刷」の区別が近年の冊子では、混乱している。


図書大概

図書大概


さて、「図書の調べ方」では、「題簽」と「外題」の違いを押さえること。見返し、前付け、後付け、奥付、小口など、図書に関する常識が記されている。岩波の『国書総目録』に関する基本的な注意は次のとおり。

岩波の国書総目録は比較を行わぬ各地の図書目録から、机上で編修した目録であるから、刊印年については全くあてにならず、所在目録として使うべきものである。また編修の方針がそうだからないものねだりをしても駄目で、所在目録として見た場合、たいへん便利で有意義な工具書である。漢籍については惜しいかなそうした所在目録さえもできていない。
(184頁)


ただし、漢籍については「全国漢籍データベース」があり、冊子体目録ではないが、ウェブ上にて検索が可能となっており、所在が分かることを申し添えておきたい。

奥付については次のとおり。

奥付は板株の保護の過程でできた日本独特のもので、それが伝統的に今日に遺存し現在の奥付となっている。近頃では物価の高騰により増刷の際、前の定価を上げざるを得ないので、奥付を記さず函やカバーの部分に記入されているものがあるが、・・・(中略)・・・図書館界や出版界ではことほど左様に刊・印・修や出版事項は冷遇されているのだ。現在のように出版点数や出版部数も増え、新書のように度々増刷を重ねるものこそ正確に刊・印・修を著録しておかぬと後世を惑わすことになる。/序でながら現今の図書の奥付で、この刊と印とを正確に記載してある出版社はごく少ない。紙型によった増刷は全て後刷で、第二刷・第三刷と云う。紙型が破損し、活字を組み換えたり、新しく版を起こしたりした場合が第二版(再版)なのである。(184頁)


「修」は一部を改めたもので、全てが違えば別版になることも記されている。これで、「刊・印・修」の違いがわかった。


『図書大概』は、190頁までが本文篇で、191〜444頁までが図版篇、更に、「索引」は用語と人名篇に分けられ、書誌学関係書として、たいへん貴重なものとなっている。


文学鶴亀

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