日本全国書誌


国立国会図書館では、昭和23年の『納本週報』から始まった『日本全国書誌』の冊子体の発行を廃止することになった。2007年6月26日刊行の2007年22号をもって刊行を終了するとのことだ。*1


国会図書館とは、周知のとおり納本制度により日本で出版された全ての本を所蔵していることになっている。納本された図書資料等を毎週『日本全国書誌』冊子体として、公共図書館をはじめ各種図書館に寄贈していたものだ。4年前から国会図書館のホームページ上で公開しており、冊子体の終了はいつか必ずやってくると予感はしていた。しかしいざ、冊子体の刊行を終了することは、ひとつの時代の終焉を迎えたことを意味する。


日本全国書誌』については、井上真琴『図書館に訊け!』(筑摩新書、2004)に、「灰色文献」の紹介を兼ねて記述している箇所を以下に引用する。


図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)

一般的な図書は馴染みがあると思うので、灰色文献の世界をまず紹介したい。すなわち、非売品や自費出版など非流通本の話である。・・・(中略)・・・/図書館の世界では、この種の資料を「灰色文献(Gray Literature)」と呼びならわす。具体的には、国や地方公共団体、企業や各種団体が発行する白書、年鑑、統計、社史、機関史、文化財調査報告書、市町村史などがこれにあたる。・・・(中略)・・・/基本的には、これらの存在を調査するには、国立国会図書館の『日本全国書誌』を使う。(p.054)


灰色文献」という言葉自体は、馴染みがないとしても、引用で触れているように「非流通本」の所在調査には重要である。図書館に収書義務があるのが、これら「非流通本」「非売品」であろう。冊子体の刊行を中止することによって、逆に図書館に行かなくても国会図書館のHPで検索したり、最近刊行された「非流通本」「非売品」*2を知ることができるのは、便利になると言えるだろう。


その一方で、書物の電子化が加速される懸念もある。二次資料とか索引誌は、冊子体よりWeb版が便利であると言える。ただ、一次資料、つまり通常の図書は、Web上で読むよりプリントアウトして紙で読む方が読みやすいから、書物としての冊子の形はなくならないはずだと思いたい。本という形態は永遠に不滅なのだ。


しかしながら、『日本全国書誌』の冊子体の刊行終了告知に対しては複雑な思いを禁じえない。


■地味な拙ブログの本日にアクセスが増えたのは、「退屈男と本と街」で紹介していただいたからです。
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