空中庭園
冒頭からキャメラを強く意識させる映画だ。タイトルが出るまでの長回しでは、キャメラが左右に揺れるどころか、360度回転してしまう。揺れる「家族」、あるいは表面では嘘をつかずに何でも話す家族だが、みんな秘密を抱えていることを、キャメラに象徴させているのだろうか。
小泉今日子が母親、板尾創路が父親。娘に鈴木杏、息子は広田雅裕、祖母に大楠道代。このキャスティングだけでも、ただならぬ家族が想定される。秘密のない家族などありえない。
小泉今日子は、母・大楠道代のために「ひきこもり」になり、うつ病となる過去を持つ。自分の家族を反面教師として、明るく幸せな家庭を築くべく意図的に、板尾創路と結婚後は早々に団地のマンションを購入する。家庭の原則は、<秘密をつくらない>こと。食事場面などでは、表面的にすべてを話しあうことにしている。
幸福な家庭のイメージが、裏側ではあっさり崩れている。夫の浮気相手に永作博美。永作の気取らない愛人としての存在感がいい。
夫が浮気していることも十分知っているが、触れると家庭の平和が崩れることが心配で、いつも笑顔で、家族と接している。しかし、あることがきつかけで、大楠道代の心に内を理解する・・・
家族を極端なかたちで描くと、このように透明な感覚になる。台所で集う家族をとらえるシーンはすべて長回し移動で撮られている。家庭の生理のようなものを生なましく捉えるための監督・豊田利晃の手法と観た。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/07/08
- メディア: 文庫
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■いま、日本映画が、好調だ。
正月から観た日本映画4本、『博士の愛した数式』『THE有頂天ホテル』、2005年度キネ旬ベストテンの『いつか読書する日』『空中庭園』、いずれにも満足した。いま、日本映画が、好調だ。アメリカ映画や韓国映画に較べても遜色がない、見応え十分な映画だった。