ランド・オブ・プレンティ


ヴィム・ヴェンダースの新作『ランド・オブ・プレンティ』(2004、独・米)は、まさしく彼の映画手法である「ロードムービー」の形式を踏んでいる。アメリカで生まれたラナは、両親とともに、アフリカからイスラエルに住み、牧師であった父の死、続く母の死によって母の兄ポールに出会うために飛行機でロスに向かう。一方、伯父・ポールは、9・11以後、ベトナム戦争後遺症により私的なテロ防衛組織で活動している、というのがこの映画の設定。


ラナはロスに到着するや、あまりに多いホームレスに驚愕を受け、伝道所でホームレス支援を手伝うことになる。伯父ポールは、眼をつけていたアラブ人が殺されたので、背後にテロ組織があるものと思い、その捜査に乗り出す。アラブ人の死が姪と伯父を結びつける。アラブ人の死体を兄のもとに運ぶ旅が始まる。


ベトナム戦争後遺症によるポールのテロとの戦いという幻想、アメリカから遠く離れて暮らしてきた少女のアメリカへの憧憬が幻滅に変容する。二人によるアメリカ大陸横断のロードムービーは、ニューヨークのツインタワーの跡地にたどり着き、そこに「希望」を見出す、という図式は、彼のフィルモグラフィからは、あまりに安易な展開としかみえない。以下に言及する作品群のヴェンダースアメリカから、遠い場所にきた監督がいる。

以下、ヴェンダースに関するメモから覚書として記録しておく。