本の収穫2005


各種雑誌・新聞等で、著名人が「今年の収穫」として、3冊から5冊を挙げて、コメントを付している。拙ブログの建前は「独断と偏見による『読書』と『映画鑑賞』の記録」としているので、昨日の映画に続いて「書物」のまとめをしておきたい。


何といっても、私にとっての最大の収穫は、茂木健一郎の著書との出会いだった。

茂木健一郎『脳と仮想』(新潮社、2004)

脳と仮想

脳と仮想

この著者の本を数冊読んだが、『脳と仮想』が圧倒的な感動をもたらした。詳細は、9月12日に記載しているとおりであるが、茂木氏に導かれて小林秀雄の講演CDを聴くことになった。


小林秀雄講演CD『文学の雑感』『信ずることと考えること』『本居宣長』『現代思想について』『随想二題――本居宣長をめぐって』(新潮社)

この五巻のCDを、車の中で繰り返し聴いている。通勤で、ドライヴで音楽の代わりに「講演」を聴くというのは不思議な気持ちだ。おかげで、小林秀雄に関する「考えるヒント」が得られた気分になっている。小林秀雄は、第三次全集とそれを補う部分として第四次全集をもっていたので、第五次全集は、別巻のベルクソン論『感想』のみ購入していた。講演を聴くうちに、第五次全集を少しづつ買い足して行き、年末に全巻揃ってしまった。結果として『本居宣長』は、新かなづかい表記の全作品の2冊を含めて、三種類の本を所有することになった。


三浦雅士『出生の秘密』(講談社
出生の秘密


三浦氏の本書から、丸谷才一の『樹影譚』への連なりについては、8月17日および18日のブログに記した。文芸批評の試みのひとつとして評価したい。


鈴木地蔵『市井作家列伝』(右文書院)

市井作家列伝

市井作家列伝

私小説作家に言及しながら、「私は、文学は”如何に生くべきか”が描かれていれば良しとする」態度に共感を覚えた。6月26日拙ブログに記載。


坪内祐三『『別れる理由』が気になって』(講談社

「別れる理由」が気になって

「別れる理由」が気になって

坪内氏の本書も、出色の評論であり、「小説」と読むことが可能な刺激的な書物だった。4月3日の拙ブログに記載。


■現代詩作家・荒川洋治が、4冊も本を上梓したこと。
・『心理』(みすず書房
・『ラブシーンの言葉』(四月社)
・『世に出ないことば』(みすず書房
・『文芸時評という感想』(四月社)

心理

心理

ラブシーンの言葉

ラブシーンの言葉

世に出ないことば

世に出ないことば


大佛次郎天皇の世紀』(朝日新聞社)の復刊。
天皇の世紀』普及版全10冊の刊行開始。12月に二冊『黒船』と『大獄』が復刻されたことは喜ばしい。第3巻『有志者』以降は、2006年1月から毎月刊行される。


■2006年度の出版企画として、岩波書店からの2点を期待している。
・『フロイト全集』全22巻別巻1(新宮一成鷲田清一等編)
・『丸山眞男回顧談』全2冊

現在の『フロイト著作集』(人文書院)は訳が古く、誤訳が多いと指摘されている。その人文書院から、北山修・監訳『フロイト全著作解説』が、今年出版されている。『全著作解説』と岩波版『全集』でフロイトの全貌が、21世紀になって現れることになる。


12月は、多忙をきわめブロクの記録が滞ったけれど、これで、今年度はおしまい。ブログは義務ではなく気の向くまま、随時記録して行きたい。