春夏秋冬そして春


湖水に浮かぶ寺院。この光景だけで、すでに絵になっている。幼年時代の春から少年時代の夏へ。春=幼年時代に、動物へのいたずら故、老師から重い石を背中に負う戒めを受ける。


夏=少年時代、気の病を帯びた少女が母親に連れられて湖上の寺院にやってくる。女性への好奇心と、蠱惑的な誘惑の罠。少年は、女性を追って外の世界へ出る。


秋=青年時代。妻を殺害した青年は警察に追われて、湖上の寺院に帰るが、老師の指示で「般若心経」を床板上に彫る。やがて、警察官二人が追ってきて、連れ去られて再び、外の世界へ。


冬=壮年時代。罪に服した青年は刑務所から帰還する。氷で仏像を彫り、厳しい修行に没頭する。


再び、春=幼年時代。壮年の男のもとへ、赤子を抱いた謎の女性が訪れる。女性から赤子を受け取り老師として幼子を育てる。ここに至り、冒頭の老師と幼子の世界に回帰している。物語が起承転結で終わりを迎えると、再度、冒頭へ戻る。再び、幼年時代から人生を反復する。老師と幼子は、冒頭の人物に同化している。


春夏秋冬そして春 [DVD]

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青年が殺害した妻とは誰か、あるいは、幼子を抱いた女性とは何者かは、一切、明かされない。謎の解明は、観るものにゆだねられている。一見、仏教的輪廻を描いているように見えるが、キム・ギドクが、仏教的世界で悟ることなどあり得ない。


いささか、あざとい手法を用いながらも、自然の風景と四季の移ろいの中で、人生の通過儀礼が描かれる。キム・ギドクにしては、あまりに自然調和的ストーリーになっている。