誰にでも秘密がある
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韓国映画、『誰にでも秘密がある』(2004)は、『冬のソナタ』でブレイクした女優チェ・ジウと、韓流四天王の一人イ・ビョンホン主演。監督は、チャン・ヒョンス。
三姉妹、既婚の長女チェ・サンミ(『気まぐれな唇』)、まじめで堅物の次女チェ・ジウ、自由恋愛を謳歌する三女キム・ヒョジンと、それぞれ関係を持つ魅力的な男性をイ・ビョンホンが演じる。
物語の時間軸を解体して、同じシーンを三人の姉妹から反復する手法は、タランティーノ『ジャッキー・ブラウン』に似ている。また、イ・ビョンホンが、一家族の中に入り込み、家族全員にかかわり去って行くのは、パゾリーニ『テオレマ』のテレンス・スタンプの役どころ。そう思って観れば、イ・ビョンホンは、テレンス・スタンプに似ているといえよう。
『テオレマ』は神をめぐる家族のお話を寓話風にまとめた作品であったが、『誰にでも秘密がある』は、コメディタッチで描かれ、『テオレマ』のパロディとみることができるだろう。あるいは、喜劇版『テオレマ』というところ。深刻に撮れば、イ・ビョンホンは神になってしまう。
おそらく、TVドラマ『冬のソナタ』がヒットしなければ、日本で公開されることのない作品だった。人妻役のチェ・サンミが、『気まぐれな唇』と同じような役どころで、形容矛盾だが清純なる妖艶女優として気にかかる。チェ・ジウは、やはりTVドラマ向きとみた。スクリーンで映える女優ではない。まじめな大学院生で修士論文を書くために図書館にかよっている。まじめな女性はいつも眼鏡をかけている。これも定番のスタイルで、やがて派手に変身する。
三女役のキム・ヒョジンはクラブでジャズを唄う歌手。ジャズ・ボーカリストとしての彼女は実に官能的な女優で、今後に期待がもてる。韓国映画の底力をみせてくれるフィルムだった。
なぜ、韓国映画に力があるのか。それは、かつての日本映画の黄金時代がそうであったように、スターが存在するからだ。スターと呼ぶに値する俳優は、日本にはいない。スターの不在と撮影所システムの崩壊が、日本映画に低迷をもたらしてきたことは、もはや周知の事実である。にもかかわらず、映画産業は何の対策も打ってこなかった。
『誰にでも秘密がある』
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