山田洋次の<世界>
- 作者: 切通理作
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/10/06
- メディア: 新書
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切通理作『山田洋次の<世界>』は、初期作品から、最新の時代劇まで丁寧に分析している。山田洋次を批判することは比較的簡単であるが、正しく評価することには、困難を伴う。なぜか?それは、国民的英雄であった「寅さん」をどのように捉えるかにかかわるからだ。
寅さんシリーズの初期作品を監督した森崎東氏のことばからの引用から
森崎は山田洋次の説くヒュマニズムは<逆説>であると書いている。
「人間というものが、自分たち同類以外の一切の生命を食用にするという、他の生物から見れば恐怖の対象でしかない存在であり乍ら、やれ人間性がどうとか、ヒュ−マニズムによって救われるとか、勝手なゴタクを並べる”いかがわしい”生き物である以上、それをサカナに料理したドラマというものが、相当に”いかがわしい”ことを、彼(山田)は先刻ご承知なのである」(『山田洋次作品集2』解説「『運が良けりゃ』について)
山田自身も『朝日ジャーナル』1978年3月31日号(No.220)でこう述べている。「ぼくらが目に触れることは極端にいえばいやなこと、醜いことばっかりじゃないんですか。だから、それを描かなきゃいけないということはぼくにはどうもわからない」(「映画は救いようのないもの、 慰めのようなもの? 山田洋次の世界を聴く」。)(p112)
どうも、この言葉のなかに、山田洋次の世界を解読する手がかりがありそうだ。切通理作は、結論的なものを回避している。にもかかわらず、80本近く作りつづけていて、つねに現役である山田洋次の作品を観続けることが必要であることを、伝えている。
私自身の山田洋次作品に対する評価は、アンビヴァレンツであることを申し添えておきたい。
肝心なことを忘れてるところであった。切通理作『宮崎駿の<世界>』は、2002年度の「サントリー学芸賞」を受賞していた。
- 作者: 切通理作
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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