上司は思いつきでものを言う

上司は思いつきでものを言う (集英社新書)

上司は思いつきでものを言う (集英社新書)


橋本治の『上司は思いつきでものを言う』(集英社新書)がベストセラーになっているという。通常、ベストセラーものは読まない主義だが、この本は走り読みをする。橋本氏は、その経歴から見ると一度も、会社勤めをしたことがない。だから、タイトルが示しているような、会社勤めのHow to本になっていないところがいかにも、氏らしい。

会社から組織一般、さらに日本社会論にまで及ぶ。

自分の上に「上司」を持たない上司は、会社のトップである「社長」だけで、それ以外の「上司」は、すべて「部下に対しては上司であり、上司に対しては部下である」という、複雑な相互の関係の中にいるのです。(p47)


そのとおりなのですね。橋本氏は、上司には儒教的「徳」を求め、現場を部下と共有することが、問題の解決につながるであろうことを示唆しています。いまさら儒教でもあるまいにと思いますが、「組織」のなかの「地位」が優先するのが、会社社会です。

世界は「現場」、他人も「現場」、そして、自分もまた「現場」なんです。日本人に欠けているのは、一番最後にある「現場」への感覚だけかもしれません。(p217)


なんだか、うまく逃げた様な回答です。決定的・根本的な解決策など容易に見つかるわけはない。そういうことです。


橋本治三島由紀夫論:第一回小林秀雄賞・受賞

「三島由紀夫」とはなにものだったのか

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