安部公房とわたし


安部公房とわたし

安部公房とわたし


女優・山口果林の自伝『安部公房とわたし』(講談社,2013)を読む。

以前、安部公房氏の娘・安部ねりによる『安部公房伝』(新潮社,2011)を読んだとき、晩年あたりから、描写が不透明になり、特に、新しい作家論というより、娘からみた父であった、山口果林は見事に排除されていた。その理由も、果林さんの自伝で納得した。



安部公房伝

安部公房伝


安部公房の娘であり、医師の安部ねり氏による『安部公房伝』(新潮社,2011)は、発売時購入し通読している。現役作家で、書き下ろし作品が発行される度に、大きな話題になった前衛作家・安部公房。『安部公房全集』(新潮社)の編集に名を連ねている安部ねり氏。その『全集』の年譜からも、女優・山口果林の名前が完全に削除されている。

安部公房伝』に掲載されているスケルトンの写真(190頁、箱根の書斎にて)は、同じものを2個購入し、作家と果林さんの二人が一体づつ所有している。もちろん、この写真を掲載する際、ねり氏はスケルトン購入の背後に隠された事実を知らなかった。もうひとつ、作家の夫人・真知氏の若い頃の写真(74−75頁の交際時、118−119頁の石川淳の隣の真知夫人)が、不思議なことに、山口果林さんの若い頃と非常によく似ていることだ。作家の女性観が皮肉にも反映されている。


安部公房全集〈1〉1942.12‐1948.5

安部公房全集〈1〉1942.12‐1948.5

安部公房全集〈30〉1924.03‐1993.01

安部公房全集〈30〉1924.03‐1993.01


箱男』『密会』『方舟さくら丸』などの作品をリアルタイムで読んできて、その背景にひとりの若い愛人がいたことが、作品を通して視えてきた。再読する機会がきた。

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

密会 (新潮文庫)

密会 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)

方舟さくら丸

方舟さくら丸