三大編纂物/群書類従・古事類苑・国書総目録の出版文化史


熊田淳美『三大編纂物/群書類従・古事類苑・国書総目録の出版文化史』(勉誠出版、2008)、本書のなかで『国書総目録』が戦前から「国書解題」として計画され、それが結果的に『国書総目録』となった経緯が詳細に記述されている。


三大編纂物 群書類従・古事類苑・国書総目録 の出版文化史

三大編纂物 群書類従・古事類苑・国書総目録 の出版文化史


利用する立場として、『国書総目録』は明治以前の書籍の探索に便利なツールという認識を出るものではなかったが、本書により実に困難な事業を民間の一出版社が成し遂げたことの偉業を知らされた。


古典籍総合目録―国書総目録続編〈第1巻〉

古典籍総合目録―国書総目録続編〈第1巻〉


現在は国文学研究資料館に版権を委譲していること、更にそれが『新国書総目録』としてデータベース『日本古典籍総合目録』となっている。利用者の利便性が増すばかりだが、その根底には、一枚一枚の採録カードの積み重ねがあったことを忘れてはなるまい。


古典籍総合目録―国書総目録続編〈第2巻〉

古典籍総合目録―国書総目録続編〈第2巻〉


塙保己一は「典籍そのもの、史料そのものを版行して、典籍、史料そのものに語らせることによって自らの著書に代えた」と熊田氏が指摘するとおり『群書類従』に結実した。その『群書類従』も、現在は『日本古典籍総合目録』で検索可能となっている。


しかも驚くべきことに『古事類苑』に至っては『古事類苑データベース』(国文学研究資料館)として本文を参照できる状況にまでなっているのだ。


熊田氏のいう「壁のない図書館」が実現されつつあることを、後世の私たちは僥倖として受けとめるべきだろう。三大編纂物とは利用することで満足するものでなく、どのような苦難を経て書物として版行されたかを知るべきだろう。熊田淳美氏の労作である本書を紐解くことによって、伝統文化の奥深さを知ることになった。




なお、『古事類苑』に関しては、大隅和雄『事典の語る日本の歴史』(講談社学術文庫、2008)の中に一章を割いて紹介されている。


事典の語る日本の歴史  (講談社学術文庫 1878)

事典の語る日本の歴史 (講談社学術文庫 1878)


今年最初の覚書は、前田塁『紙の本が亡びるとき』(青土社、2010)に触発されて書物が「文化」であることを立証した熊田氏の著書への言及で始めることができた。


紙の本が亡びるとき?

紙の本が亡びるとき?