金融危機後の世界


ジャック・アタリ著、林昌宏訳『金融危機後の世界』(作品社、2009)は、アメリカ発の金融危機がどのように起きたか、そして、今後どう対応すれば、資本主義の崩壊を阻止できるのかが、きわめて明解に書かれてあり、経済学専門ではない者にもじつに分かりやすい内容となっている。

ジャック・アタリの言う<インサイダー>たちが、巧みに情報を隠蔽ながら複雑な金融商品を開発し、貧困者のみならず中間層のローンを債権化し、投資家に正確な情報を提供することなく大きなリスクを負わせて、危機事前に大金を持ち逃げし、市場から撤退したのが<インサイダー>たちなのである。

アタリ氏が原書の序文部分で、金融危機を脱するための最低限の措置を次のように記している。

  1. ”カジノ金融”に終止符を打つための方策として、経済や金融に関する情報を、すべての人に公平かつ同時に公開し、そして誰にとっても利用可能にすること。
  2. 金融市場は、そもそもグローバルなものである。この国際金融市場と、世界的な法整備とのバランスをとること。
  3. これは、銀行家には絶対嫌がるであろうが、銀行家という職業を謙虚で退屈な仕事に舞い戻らせること。
  4. 金融的なリスクや流動性の問題を、世界規模できちんと管理すること。
  5. 報酬制度を見直し、証券業務と銀行業務を分離し、他人に自らのリスクを負わせる人々に対する責任を追及すること。
  6. すでに国によっては国家規模で、取り組んでいるが、地球環境の面で持続性のある世界規模の大型公共事業を実施すること。(p037-038)

金融危機後の世界

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