地図のない道

ヴェネツィアのゲットについて、須賀敦子が『地図のない道』の「ゲットの広場」で、旅先でヴェネツィアのゲットを訪れたときの印象を記している。

地図のない道 (新潮文庫)

地図のない道 (新潮文庫)

手すりもなにもかも木でつくった粗末な橋を渡ると、狭い、天井の低い、暗い電灯にぼんやりと照らし出された、気味の悪い異界への通路を思わせるトンネルがあって、それを抜けたところが、ゲットの広場だった。
暗い芝居の書割のような、六、七階はあるだろうか、ヴェネツィアにしては異様なほど背の高い、それでいて極端に間口の狭い建物がいくつか並んでいた。それぞれが互いに倚りかかり、支えあっているような家たち。それはかつてゲットにとじこめられていた住民たちが、自分たちに残されたすくない権利を守るために、手をとりあって生きてきた姿そのままのようにみえた。(p.399,『須賀敦子第3巻』)

須賀敦子がイタリア人の夫ペッピ−ノを失ったあと、1994年に書かれたこの文章では、7年前にヴェネツィアを訪問したと記録されているが、1980年代ころのゲットの風景が読者の眼前に広がるように記述されている。おそらく『ヴェニスの商人』の時代からさほど変化していないだろうことは想像がつく。(2006年2月12日追記)


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