シークレット・ウインドウ


ジョニー・デップ主演、デビット・コープ監督『シークレット・ウインドウ』(2004、米)を観た。スティーヴン・キング原作といえば、『シャイニング』(キューブリック監督)や、『ミザリー』(ロブ・ライナー監督)の2作が直ちに、想起される。いずれも、作家の狂気や災難を描いているという点で、『シークレット・ウインドウ』と共通点がある。


妻の浮気が原因で離婚した作家モート(ジョニー・デップ)の前に、「俺の小説を盗んだ」と盗作をネタに脅迫するシューター(ジョン・タトゥーロ)が現われる。作家モートは、かつて盗作の経歴を持つ。白紙の原稿用紙を前に、作品を書く作家とは孤独な存在であり、一歩間違えば、『シャイニング』のジャック・ニコルソンになってしまう危険性がある。


ジョン・タトゥーロは、ジョニー・デップの分身であり、小説を書くという行為を共有する存在である。ジョニー・デップは、書くことについて完璧性を求める作家のようである。シューターが現れてから、次々と事件が起きる。探偵やシューターの目撃者が殺されるし、モート所有の家、現在は別れた妻が住む家屋が火災にあう。それも放火らしい。モートは、妻の浮気相手ティモシー・ハットンに異常なまでに嫉妬心を抱いている。ジョニー・デップに感情移入していると、浮気相手が犯罪者に見えてしまう。


以上が、『シークレットウィンドウ』の結末前の状況であり、作家モートを演じるジョー・デップの演技が際立っている。ハリウッドの異端児であるジョニー・デップとは、その存在自体が、魅力的あり、どんな役を演じてもジョニー・デップであるが、同時に役柄に同化していることでも、貴重な俳優だといえるだろう。


無精ひげに、くしゃくしゃの髪、作家然とした茶色のフレームの眼鏡。アルコール中毒らしきふるまい。いかにも謎めいた存在である。ここから先は、ネタばれになるので、言及することは控えるけれど、事件後には金縁のフレームの眼鏡に変わっているし、暗い表情から、異様に明るい男に変身している。このあたりの役作りは秀逸という言葉に尽きる。


ティム・バートンシザーハンズ』に主演以来、エミール・クストリッツァの『アリゾナ・ドリーム』、ラッセ・ハルストレムの『ギルバート・グレイプ』、ティム・バートンの『エド・ウッド』、ジム・ジャームッシュの『デッドマン』、テリー・ギリアムの『ラスベガスをやっつけろ』、ロマン・ポランスキーの『ナインスゲート』、サリー・ポッターの『耳に残るは君の歌声』、再びラッセ・ハルストレムの『ショコラ』など、個性的な監督と組み、映画史に残る作品に出演し続けている。


私生活では、ヴァネッサ・パラディという美しい女性と、結婚という形式にこだわらない共同生活を営んでいる。おそらく、女性から見て、理想的な男性像に写ることは間違いない。
俳優の名前だけで、一定の観客を招き寄せることができる稀有な存在なのだ。


シークレット・ウインドウ
http://www.sonypictures.jp/movies/secretwindow/site/contents.html


ジョニー・デップ主演作品

シザーハンズ〈特別編〉 [DVD]

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ナインスゲート デラックス版 [DVD]

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