奥野信太郎

女妖啼笑―はるかな女たち (講談社文芸文庫)

女妖啼笑―はるかな女たち (講談社文芸文庫)


奥野信太郎『女妖啼笑 はるかな女たち』(講談社文芸文庫)。中国文学者・奥野信太郎氏の自伝です。自伝とはいっても、著者がいう「愛婉癖」に従って、女性遍歴を赤裸々に、とはいっても、文章の味わいは粋なところがあり、羨ましい記述になっているのです。


明治・大正・昭和の女性たちを知るためにも、この本の価値は十分あります。荷風の『珊瑚集』を中国語に翻訳したこともあり、荷風的生き方と、幾分通ずるところもあるのです。本当に「もてる男」とは、奥野信太郎氏のような人を指すのでしょう。


知識人が女性にもてた時代。もはや過去となってしまったけれど、そんな時代があったのです。


講談社文庫は、文庫本としてみれば割高な本が多いのですが、内容を換算すれば、決して高くはない、良質の文庫なのです。*1講談社文庫のラインアップが、他社の文庫にはない良さがあります。流行を追わない、文学のスタンダードが揃っているのです。少しづづ触れてゆきたいと思っています。

*1:ちなみに講談社の関係者ではありません