スピノザの世界


スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)

スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)


上野修スピノザの世界 神あるいは自然』(講談社現代新書)が出版された。スピノザに関する入門書は少ない。私は、哲学の専門家ではないし、書評なるものが書けるわけもないから、入門書としては、貴重な部類に入る本書に少し触れておきたいだけである。この種の入門書として、素人にも解りやすく、しかも、スピノザの思想がきわめて現代的でもあることが知らされる。


スピノザの「神あるいは自然」とは、宗教的な「神」ではなく、「永遠・無限の実有」であり「すべてを包み込む大自然のようなもの」というより「不気味な存在露呈」と捉える。


上野修によれば、デカルトの残した問題として、「観念の問題」と「心身合一」の難問があるという。スピノザは、この二つの難問を解決している。とくに「永遠」や「至福」は、「神」とともにあるという発想は、唐突だが<東洋的悟り>の世界を連想させる。


なぜか、スピノザにある「永遠」を「神あるいは自然」のもとで生きるという発想に惹きつけられるのだ。スピノザのいう「神あるいは自然」とは、近代の「神」なき世界では、「無意識」に置き換えることだできよう。あるいは、仏教的には「無」に近いものとして想定すれば分かりやすいかも知れない。