アフガン零年


アフガン零年 [DVD]

アフガン零年 [DVD]


セディク・バルマク『アフガン零年』(2003)。
復興アフガンの映画というだけで、観る価値あり。タリバン政権下での女性、子供たちの置かれた状態を、一人の少女を中心に再現する。恐怖政治の恐さと、無力感がひしひしと伝わってくる。23年間も戦争が続いたことが脅威。


主役の少女は、タリバンの目を逃れて、仕事をするために髪を切り、少年となる。その表情は厳しく、悲しく、そして美しい。お香屋の少年の生き生きとした表情。こどもたちは、皆な、輝いている。「こどもを救え」といったのは、魯迅だが、世界の未来はこどもたちが担うのだ。処刑を免れた少女を待っている運命は、平坦ではない。いったい、どこに救いがあるのだろうか。


戦火のさめやらぬ中で製作された映画。アフガンでは、タリバン政権下、映画の製作も、映画を観ることも禁止されていた。映画を観ることができる幸せを痛感させる映画だ。




イラン・イラク・アフガンの映画三本を観て、イスラムの価値観とキリスト教的普遍主義の差異を、埋めることのできない溝と感じた。アメリカが、いや、ブッシュが次の標的(「悪の枢軸」)として、イランを攻撃するのではないかという不安がよぎるのだ。キアロスタミやマフバルバフの撮る映画では、アメリカにイランを攻撃する理由は見出せない。


映画とは、戦争の畏怖を描くとともに、観ることの至福を伝える二律背反的メディアだ。20世紀は映画の時代であった。アメリカや一部ヨーロッパ映画中心の「映画史」は、21世紀において書き換えられなければならないだろう。