誰も知らない
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是枝裕和監督の、というよりカンヌ最年少で主演男優賞を受賞した柳楽クンの名前であまりにも著名になってしまった『誰も知らない』(2003)を観た。前作『ディスタンス』(2001)ではオウム真理教の信者とその遺族たちを、そして、『誰も知らない』は「西巣鴨子供四人置き去り事件」を題材に、アクチャルな問題を、是枝氏固有の世界へと造型している。
とくに、『誰も知らない』は、母親YOUに置き去りにされた兄弟姉妹四人が自分たちで生活して行く過程を実に淡々としたテンポと一種距離をおいたような映像で語られる。
長男(柳楽優弥)、長女(北浦愛)、次男(木村飛影)、次女(清水萌々子)だけの生活は、長男の明が、京子、茂、ゆきの3人の面倒を見ることを意味している。母親を信じて待つ四人がいとおしく、自分の少年時代を回想しながら観てしまう。母に不満を持っていたが、一緒に居ないことがどんなに子供たちに大きな影響を与えるかを。最初は、食材を買い、それなりの食事ができるが、次第にお金が少なくなり底をつく。コンビニの売れ残りのおにぎりを貰うような生活になる。この食料豊富な時代でついには、カップメンがご馳走になるのだ。
子供たちは戸籍がなく、学校にも行けない。それでも、子どもたちだけの生活は、最初は一見楽しそうに見える。しかしながら、そのうちに電気、ガス・水道が止められ近くの公園で、洗濯やトイレや水の調達をすることになる。やがて、公園で出会う不登校の女子中学生・韓英恵が時々仲間に加わる。彼女は瀟洒なマンションに住んでいる。
京子が、母親のことを何となく分かり始め、兄が母からのお年玉として預かったお金は、実は兄が3人のために作為したものであることに気づき、ピアノを買うために残していたお金を兄に渡すシーン。子ども四人が外出し、公園で野草をみつけそれをアパートのベランダで育成して行く過程のうきうきする感覚。
子どもたちは、学校に行きたい思いが強い。明がしばしば、学校の近くから校庭を見つめる光景に、思わず涙が出てしまう。
明が少年野球チームと一緒に遊んでいる間に、次女が椅子から落ちてしまう。スーツケースに入れて、次女が大好きだった羽田空港まで、明と少女が電車に乗り、モノレールで移動する。羽田空港の空き地から見る、飛行機。
私たちは、映画を観ながら、自分の少年少女時代を重ね合わせ、追体験していることに思いあたるだろう。ラストショットは、次女の替わりに少女が加わった四人がキャメラに背を向けて歩いて行くストップモーション。その後の彼らを想像する余韻の残る映画だ。
子どもたちの表情がいい。柳楽優弥の目はすんでいて鋭い。印象深い眼だ。北浦愛や韓英恵の表情もいい。もちろん木村飛影や清水萌々子の動作や表情も。明け方、羽田空港からもどり、陸橋の上で柳楽優弥と韓英恵が並んでたたずむシーンが印象的であった。
映画は、子どもたちの日常を淡々と描いて行くだけ。そこに作者の考えの押しつけはない。考えるのは、映画をみる観客である。優れた映画とは、何度も繰り返し観たくなる映画のこと。悲惨な話であるにもかかわらず、眼をそむけるのではなく、じっと見つめたくなる映画だ。
『誰も知らない』の公式ホームページ
http://www.daremoshiranai.com/
■是枝裕和監督作品
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2004年度暫定ベスト映画
2004年度は、日本映画の質の高さを示す作品が多く、9月26日(日)現在での、とりあえずのベスト10を選んでみた。もちろん、今後も、宮崎アニメが控えているし、変わることを前提としての選択である。
暫定的なベスト10ができるのも、日本映画が充実していることの証明であろう。アニメを除き、いわゆるCGを使用しない人間ドラマがリストアップされる結果となった。確かに、映画は20世紀で終わった。とくにハリウツド映画は過去の作品をもとに、見世物的要素(CG等)を加味して、映画以外の何物かに変質させつつある。そんななかで、中国・韓国・台湾・イランなどのアジア映画が健闘している。映画の持つ力がどこにあるのか、原点に帰るべきときなのだろう。上位3本を観て、ベスト5を考えているうちに、10本になってしまった。