2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

人間を守る読書

このところ気になる書評本の出版が続いている。坪内祐三『四百字十一枚』(みすず書房)、川上弘美『大好きな本』(朝日新聞社)、鹿島茂『鹿島茂の書評大全 洋物篇』『同 和物篇』(毎日新聞社)、四方田犬彦『人間を守る読書』など。坪内祐三と川上弘美本…

13/ザメッティ

グルジア出身のゲラ・バブルアニがフランスで撮った最初の映画『13/ザメッティ』(2005)は、集団ロシアンルーレット*1によるデスゲームが映画の核になっている驚くべき作品だった。いわゆるフィルムノワールというジャンルに収まらず、ハードボイルドあるい…

プラネット・テラー in グラインドハウス

ロバート・ロドリゲス監督の『プラネット・テラーinグラインドハウス』(2007)は、もう一本のグラインドハウス映画。こちらは、ゾンビ映画の引用とジョン・カーペンターをリスペクトした作品。『デス・プルーフ』ではあっさり殺人鬼に殺されたローズ・マッ…

デス・プルーフ in グラインドハウス

クエンティン・タランティーノ『デス・プルーフinグラインドハウス』(2007)は、B級作品、それもまぎれもなく低予算で、しかもドライブインシアターで上映されるような作品を目指したフィルムだ。 アメリカ大都市近郊の二番館・三番館にかけられるフィルム…

ヴンダーカンマーの謎

小宮正安『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』(集英社新書、2007.9)を店頭でみて、はらぱら頁をめくりながら中の図版をみると既視感にとらわれた。もちろん、高山宏の著書『魔の王が見る』(ありな書房、1994.6)の第1章「ヴンダーカンマー」であり、『表象…

魔笛

オペラ『魔笛』の「序曲」にあわせて、キャメラは緑あふれる自然を捉えたかと思えば大移動をし、第一次大戦の塹壕の中へ入り込む。大胆な解釈によるケネス・ブラナー版『魔笛』は、冒頭から一気にドラマに引きこんでいく。 映画「魔笛」オリジナル・サウンド…

ガラスのような幸福

高山宏『ガラスのような幸福』(五柳書院、1994)は、著者本人が一番気に入っている本というだけあって、物に即して、近代とはどのようなものであるかを語る実に刺激に富んだ書物になっている。しかしながら、2007年の現在から見ると7年前の著作であり、その…

ゴッホについて/正宗白鳥の精神

小林秀雄講演CD第七巻『ゴッホについて/正宗白鳥の精神』を聴く。小林秀雄講演CDについては、拙ブログ2005-10-11と2005-10-16、二度にわたり言及した。 小林秀雄講演 第7巻―ゴッホについて/正宗白鳥の精神 [新潮CD] (新潮CD 講演 小林秀雄講演 第 7巻)作…

垂乳女(たらちめ)

河瀬直美が『殯(もがり)の森』(2007)でカンヌグランプリを受賞した翌々日、BSハイビジョンで放映があり、その時の感想は拙ブログ2007-05-29に記載した。今回、あらためてスクリーンで見直してみて、基本的な部分に変更はないものの、大きなスクリーン…

クロスしてリファー

高山宏は、作品のなかでしばしば『OED(Oxford English Dictionary)』や、チェインバーズの『サイクロペディア(Cyclopaedia: or, An Universal Dictionary of Arts and Sciences)』、更にロジェの『シソーラス(Roget's Thesaurus of English Words and P…

魔の王が見る

高山宏は、「博物学の想像力」(『魔の王が見る』)で、バルトルシャイティスの魅力を次のように記している。 魔の王が見る―バロック的想像力作者: 高山宏出版社/メーカー: ありな書房発売日: 1994/06メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (7…

アベラシオン

はじまりは、四方田犬彦『先生とわたし』(新潮社、2007.6)だった。先生とは由良君美であり、拙ブログ2007-07-27で取り上げた。英文学の由良君美は、四方田氏の見解を引用すれば、 私見するに、由良君美という存在の再検討は、かつては自明とされていた古典…