2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

遭難

本谷有希子の戯曲『遭難』(講談社、2007.5)読了。本作は、2006年10月に青山円形劇場で公演され、第10回鶴屋南北賞受賞作。登場人物は5名。舞台は高校の職員室。自殺未遂を起こし意識不明の仁科京介の母親が、職員室に詰めかけ、担任の江國にいきなり「あん…

網野善彦著作集

再び、朝のラジオ森本毅郎の「日本全国8時です」から。火曜日のゲストは荒川洋治さん。今日の話題は、「網野史学」で著名な『網野善彦著作集』(岩波書店)。5月から配本が開始された岩波書店の『網野善彦著作集』全18巻+別巻について、荒川さん独自の「こ…

老醜の記

勝目梓『老醜の記』(文藝春秋、2007)読了。バイオレンスとエロスの作家・勝目梓氏が、自伝小説として、『小説家』(講談社、2006)で話題になった。『小説家』は未読だが、先に『老醜の記』を読む。 老醜の記作者: 勝目梓出版社/メーカー: 文藝春秋発売日:…

舞妓Haaaan!!!

宮藤官九郎脚本・阿部サダヲ主演とくれば、ハイテンションの超喜劇を予想するが、水田伸生監督『舞妓Haaaan!!!』(2007)はまさしくそのような映画だった。期待どおりというか、期待に違わず、楽しく観ることができた。 舞妓Haaaan!!! オリジナル・サウンド…

ブラックブック

ハリッドで活躍しているオランダ出身のポール・バーホーベンが、故郷オランダを舞台に撮った『ブラックブック』(2006)を観る。時代設定は、ナチス制圧下でユダヤ人迫害問題と、オランダ人のレジスタンスとの接点や、ナチス将校に接近するユダヤ人女性ラヘ…

善き人のためのソナタ

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督『善き人のためのソナタ』(2006)を観る。ベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。芸術家たちは、国家による秘密警察「シュタージ」によって、絶えず監視されていた。生真面目な「シュタージ」の一人ヴィスラー大…

ドーダの近代史

鹿島茂『ドーダの近代史』(朝日新聞社、2007.6)は、東海林さだおの「ドーダ学」を基にしている。幕末の水戸学から始まる「ドーダ」の近代史を読みながらも、東海林さだお『もっとコロッケな日本語』(文春文庫、2006)をまず読む。 ドーダの近代史作者: 鹿…

文学のハンカチ王子

今朝のラジオ、森本毅郎「日本全国8時です」で、ゲストの荒川洋治が「文学のハンカチ王子」について語っていたのが面白かった。「森本毅郎スタンバイ」から引用しておく。 坪内逍遙・二葉亭四迷集 (新日本古典文学大系 明治編 18)作者: 青木稔弥,十川信介出…

今宵、フィッツジェラルド劇場で

ロバート・アルトマンの遺作『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(A Prairie Home Companion,2006)を観る。アルトマン映画の特徴は、登場人物が多いことだろう。『今宵、・・・』は、アルトマン映画の最後を飾るに相応しい俳優・歌手たちが数多く出演している…

ドゥルーズ・映画・フーコー

丹生谷貴志『ドゥルーズ・映画・フーコー』(青土社、2007)は、1996年版の増補版で、ドゥルーズ『シネマ1*運動イメージ』の刊行に合わせて、増補版を出版したものと思われる。ところが、法政大学出版局のホームページを見ると、6月新刊のラインナップに…

監督・ばんざい!

北野武『監督・ばんざい!』(2007)を観る。暴力映画を封じられた監督・キタノタケシが、まず小津安二郎風の「定年」を撮る。ビートたけしが定年を迎え、バーのマダム入江若葉のお勺で日本酒を呑み、帰宅。家では妻・松坂慶子が待っていた。娘の木村佳乃の…

ウェブ社会をどう生きるか

西垣通『ウェブ社会をどう生きるか』(岩波新書、2007.5)は、ウェブ礼賛論者に対抗する警告の書である。梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書、2006)に対して、『情報学的転回』(春秋社、2005)が位置していた*1と同様、今回は、梅田望夫/茂木健一郎『フ…