2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三つ数えろ

ハワード・ホークス『三つ数えろ』(1946)は、レンモンド・チャンドラーの原作「The Big Sleep」を映画化したのだが、ストーリー展開、特に人物関係が分かりにくいので有名な作品。にもかかわらず、マーローに扮したハンフリー・ボガートと富豪の姉娘ローレ…

純粋理性批判

もちろんこの機会に、原佑訳を渡邊二郎氏が補訂補訳したカント『純粋理性批判(上・中・下)』(平凡社ライブラリー、2005)も読みたい。積読で放置してきた哲学の古典を読むことを自らに課したい。結果はどうなるか心もとないが、しばらくは新刊本を敬遠し…

精神現象学

このところ、拙ブログでは映画の覚書ばかり記録している。それには私なりの理由があるからで、本に関しては、昨年末から、例えばホルクハイマー・アドルノの『啓蒙の弁証法』(岩波文庫、2006)、ハイデッガーの『ハイデッガーカッセル講演』(平凡社ライブ…

リトル・ミス・サンシャイン

アカデミー賞助演男優賞受賞したアラン・アーキンが祖父役で出演している、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)を観た。インディーズ系の小品がアメリカでヒットした。一言にしていえば崩壊した家族の再生物語をロードムービー形式で見せる作品。 リトル…

郵便配達は二度ベルを鳴らす

ジェイムス・ケインの小説の映画化で、テイ・ガーネット監督による『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1946)をDVDで観ることになったのは偶然であった。同じ原作から、のちにボブ・ラフェルソンが同じタイトルで映画化し、ジャック・ニコルソンとジェシカ…

サーク・オン・サーク

アメリカ映画を代表する映画監督は、ジョン・フォード、アルフレッド・ヒッチコック、ハワード・ホ−クスということになる。フォードを別格とすれば、ヒッチコックもホークスも、ヌーヴェル・ヴァーグによって発見された職人監督である。サスペンスのヒッチコ…

風と共に散る

ダニエル・シュミットが撮ったダグラス・サークのドキュメンタリー映画『人生の幻影』(1984)を観て以来、そこに引用されていたダグラス・サーク(デトレフ・ジールク)のハリウッド時代の名作、『スキャンダル・イン・パリ』(1946)『天が許し給うすべて…

蒼き狼

構想27年、制作費30億円、四ヶ月のモンゴルロケ。モンゴル建国800年記念映画というコピーで、観る気がしなくなるのだが、『蒼き狼 地果て海尽きるまで』は澤井信一郎監督という一点のみで観ることにしたのだった。 蒼き狼 地果て海尽きるまで ナビゲート ~史…

『ロング・グッドバイ』読了

村上春樹新訳『ロング・グッドバイ』を読了。分かったことは、チャンドラーは徹底して「文体の作家」だということ。文体の魅力とともに、文明批評がシニカルに展開されている。村上春樹は、チャンドラーの比喩や形容することばの過剰さを、引き継いでいるこ…

ロング・グッドバイ

村上春樹新訳三部作の最終作。レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』(早川書房)が、発売された。フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』(中央公論社、2006)が、昨年11月だったから、随分早いペースだ。早速「訳者あとがき」から読む。 ロ…

事象そのものへ!

池田晶子さんの知識人批判には「生と死」を根源的に問う「存在論」があった。『事象そのものへ!』(法蔵館、1991)から引用する。 事象そのものへ!作者: 池田晶子出版社/メーカー: 法蔵館発売日: 1991/07/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 3回この商…

池田晶子さんの早すぎる死

今日(3月3日)の朝刊で池田晶子さんの訃報を知った。2月23日に逝去されたとのこと。46歳の早い他界に無念の思いが強い。『最後からひとりめの読者による埴谷雄高論』(1987年)で登場した池田さんの印象は強烈だった。 私が持っている池田さんの著書は10冊…