2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

歳月

茨木のり子さんの遺稿詩集『歳月』(花神社、2007)が刊行された。内容は、亡夫・三浦安信氏への想いを綴った詩集。不在の夫を想う妻の「恋ごころ」が素直に表現されていて、読んでいると、とても清々しい気持ちになる。 たとえば「誤算」と題された詩がある…

戦後文学エッセイ選

松本昌次主催の出版社・影書房は『戦後文学エッセイ選』全13巻という地味な企画があり、松本氏はこの企画について次のように記している。 この〝選集〟に収録させていただく戦後文学者の方がたはわたしがかつて未来社の編集者として在籍(一九五三年四月〜八…

見るべきほどのことは見つ

見るべきほどのことは見つ作者: 内村剛介出版社/メーカー: 恵雅堂出版発売日: 2002/06メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る 内村剛介には、『生き急ぐ』があるが、今手元に見つからないので、近刊『見るべきほどのことは見つ』…

石原吉郎詩文集

戦後問題の一つにシベリア抑留体験の人たち、石原吉郎、長谷川四郎、内村剛介の著作がある。木下順二がいう「未清算の過去」のなかでも、もっとも話題にされない敗戦後問題である。石原吉郎『石原吉郎詩文集』、長谷川四郎『シベリア物語』、内村剛介『生き…

狼少年のパラドックス

またまた、内田樹の著書。狼少年のパラドクス―ウチダ式教育再生論作者: 内田樹出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2007/02メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (45件) を見る内田樹『下流志向』に続いて出版された『狼少年のパラドックス …

みすず読書アンケート2006

各種の読書アンケートで一番の楽しみは『みすず』1/2月号の「読書アンケート」。今年も早速、通読してみる。アンケートの回答者にもなっている市野川容孝『社会』(岩波書店)を5名の回答者が挙げているのに注目。コメントも充実している。 社会 (思考のフロ…

下流志向

内田樹の『下流志向』(講談社、2007)読了。内田氏の視点は、大学教授でありながらも、現代思想専門の立場から、対症療法的に若者の動向を捉えるのではなく、本質論的な見方をしているので、不意打ちを受けるような衝撃があるから読者は要注意、と前置きし…

ディパーテッド

アメリカ映画がいまや新しい素材をもとに製作するのではなく、似たようなシリーズものや、リメイク作品の多さにみられるように、脚本のオリジナリティがなくなってきている。2006年度の日本における興行成績が、数十年ぶりに邦画が洋画を凌駕した。たしかに…

蟻の兵隊

木下順二氏がいうところの「未清算の過去」を映画化したのが、『蟻の兵隊』であろう。映画『蟻の兵隊』は、金谷薫監督が「日本軍山西省残留問題」を、生き残った奥村和一氏に寄り添うようにキャメラでドキュメントした傑作である。戦争を映画に撮ることはき…