2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第5回小林秀雄賞

荒川洋治『文芸時評という感想』(四月社、2005)が、「第5回小林秀雄賞」を受賞した。12年間の「産経新聞」掲載の「文芸時評」を収録した本が小林秀雄賞というのは、初期の小林氏のスタイルを考えれば、じつに妥当な選出だろう。拙ブログでは昨年末の12月2…

考える人

新潮社の季刊誌『考える人』の創刊号からの連載をまとめた坪内祐三『考える人』を読了。小林秀雄で始め、福田恆存で終えている。田中小実昌、中野重治、武田百合子、唐木順三、神谷美恵子、長谷川四郎、森有正、深代惇郎、幸田文、植草甚一、吉田健一、色川…

UDON

TVディレクターであった本広克行が監督した『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998)以降、エンターテインメントとして撮る映画に注目してきた。前作『サマータイムマシンブルース』は拙ブログでも「傑作」として取り上げたが、映画づくりの骨法を押さえた彼の才能…

坂口安吾 百歳の異端児

今年2006年が、安吾生誕100年になる。出口裕弘『坂口安吾 百歳の異端児』読了。安吾といえば、通常、『堕落論』『白痴』『桜の森の満開の下』『安吾巷談』など戦後の作品を中心にいわゆる無頼派として評価されてきた。 坂口安吾 百歳の異端児作者: 出口裕弘…

ゲド戦記

あらかじお断りしておきたい。この覚書は、今ネットで宮崎吾朗バッシング現象があるらしいが、それとは全く無関係である。以下は、あくまで個人的な感想にすぎない。 宮崎吾朗の第一回監督作品『ゲド戦記』は、父駿のジブリ後継者としての可能性が判断される…

憲法九条を世界遺産に

日本国憲法の改正論議が活発ななかで、どちかといえば改正派が強くなりつつある状況で、九条問題に絞りしかもそれを「世界遺産」として評価するという提案のもと、爆笑問題の太田光が、宗教人類学者で思想家の中沢新一と対談した新書『憲法九条を世界遺産に…

サルトル『むかつき』ニートという冒険

みすず書房「理想の教室」シリーズの8月刊行、「実存主義」再評価の二冊目。合田正人『サルトル『むかつき』ニートという冒険』は、いささかてごわい。というより、本書は、「理想の教室」からズレてしまっている。つまり、テクストの解読というこのシリ−ズ…

カミュ『よそもの』きみの友だち

野崎歓『カミュ『よそもの』きみの友だち』を読む。みすず書房「理想の教室」シリーズで、今月は、実存主義のサルトルとカミュの新たな、「読み」に挑戦している二冊が刊行された。『異邦人』として読んできたカミュの代表作を、野崎歓が『よそもの』として…

立喰師列伝(原作)

映画版を観るとき、未読であった小説版『立喰師列伝』は、押井守の思惟方法が解かる内容になっている。映画『立喰師列伝』の原作にして、いわば押井守の原点であり、思想的集大成ともいえる傑作だ。 立喰師列伝作者: 押井守,落合淳一出版社/メーカー: 角川書…

これからホームページをつくる研究者のために

メールマガジン「Academic Resource Guide」の編集者・岡本真の初めての著作。副題が「ウェブから学術情報を発信する実践ガイド」として、研究者に論文や学会報告などの学術論文をウェブ上で公開することを奨励するガイドブックになっており、単なる「HPの…

世界一周恐怖航海記

車谷長吉が、嫁はんの高橋順子に誘われて、三ヶ月間の世界周遊の航海に出る。その記録が本書。車谷長吉初めての海外旅行が船旅だった。1000人近い乗客を乗せた豪華客船は、日本社会の縮図であると著者は言う。車谷氏は、高橋順子と友人の詩人・新藤凉子さん…