2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

村上春樹論

小森陽一『村上春樹論 『海辺のカフカ』を精読する』(平凡社新書)は、村上春樹論の中でも全否定に近い批評になっている。オイディプス神話、バートンの『千夜一夜物語』、漱石の『坑夫』『虞美人草』、カフカ『流刑地にて』などに言及しながら、日本の戦中…

家族のゆくえ

家族のゆくえ (学芸)作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/02/23メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 8回この商品を含むブログ (17件) を見る 吉本隆明関係本がこのところやたら目につく。多くは、再編集ものや聞き書きなどだが、自ら書き下…

カミュなんて知らない

大学の正門で携帯電話から主役の代役を依頼している前田愛、そこへバイクで正門から入ってきて彼女に話しかける監督の柏原収史。柏原を見つけた恋人吉川ひなのはストーカーのように彼を追いかけている。鈴木淳評と伊崎充則が映画の冒頭長まわしシーンについ…

「性愛」格差論

斎藤環と酒井順子の対談、「おたく」と「負け犬」を代表する論客とエッセイストの対談となれば面白くないわけはない。抽象的な思考で語る斎藤環と、現実の些細な差異にこだわる酒井順子の対話は、通常では交差しないように見える。しかし、本書を読むと、あ…

アメリカ,家族のいる風景

前作『ランド・オブ・プレンティ』が、アメリカを描きながらも、いまひとつヴィム・ヴェンダースの意図が空回りしていたことを指摘したが、最新作『アメリカ,家族のいる風景』(原題:Don't ComeKnocking,2005)では、『パリ、テキサス』のサム・シェパード…

ブロークバック・マウンテン

広大な山並みと美しい風景。抜けるような青空。カウボーイ達へのオマージュと挽歌とも言えるアン・リー監督『ブロークバックマウンテン』は、ひたすら美しい背景のなかで、楽園を体験した者が、世間から受ける仕打ちに耐えながら20年間の間、友情と愛情を…

V フォー・ヴェンデッタ

『グーグルGoogle』から、最近観た『V フォー・ヴェンデッタ』を連想したといえば、強引になるだろうか。 Vフォー・ヴェンデッタ (竹書房文庫)作者: スティーブムーア,デイビッドロイド,ウォシャウスキー兄弟,Steve Moore,the Wachowski Brothers,山田貴久出…

グーグルGoogle

佐々木俊尚『グーグルGoogle−既存のビジネスを破壊する』(文春新書)読了。グーグルに関しては、梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書)*1に次いで、ネット社会の現在と未来を予想するきわめて興味深い内容になつている。 グーグル―Google 既存のビジネス…

『ヴィーナスの誕生』視覚文化への招待

みすず書房の「理想の教室」シリーズは、充実している。拙ブログでも何回か取り上げたが、岡田温司『『ヴィーナスの誕生』視覚文化への招待』は、絵画を視て楽しむ方法の導きになっていて、大変楽しく読むことができた。 『ヴィーナスの誕生』視覚文化への招…

百輭先生月を踏む

久世光彦(1935−2006)は、小説を書きはじめた動機として、「私が五十歳を過ぎて、何を今更と言われながら、ものを書きはじめた動機の一つに向田邦子への嫉妬があった。」(『昭和恋々』)と述べている。TVドラマの演出家として、向田ドラマを演出しながら…