2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

帝国

アントニオ・ネグリとマイケル・ハート『帝国』(2003)の原書刊行が2000年であったこと、その後、2001年9月11日のツイン・タワーへの攻撃があり、アフガン・イラク戦争へ転回していったのは周知のとおりだ。にもかかわらず、20世紀が「戦争と革命の時代」で…

世界共和国へ

柄谷行人『世界共和国へ−資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)読了。著者によれば、『トランスクリティーク』およびその続編を、専門的ではなく、「普通の読者が読んで理解できるようなものにしたい」と新書のかたちに書き下ろしたそうだ。 世界共…

ヴェトナム映画の香り

2年ほど前に書いた「ベトナム映画」に関する原稿(覚書)だが、埋め草として拙ブログに記録しておきたい。 【ヴェトナムから遠く離れて】 かつてヴェトナム戦争があったことを知らない世代が増えている、いやそれ以前のベトナムは、フランス領であったことも…

文藝・高橋源一郎

結婚が5回、離婚が4回。現代文士の鏡ともいうべき高橋源一郎。『文藝』2006年夏号*1は、その「高橋源一郎特集」を組んでいる。島田雅彦の「源ちゃんの人生」(p.70−71)が、面白い。彼岸先生 (新潮文庫)作者: 島田雅彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 19…

回想:出版界の四半世紀

いささか旧聞に属するが「本のメルマガ vol.244」(2006.03.25.発行)から引用をしておきたい。著者は、編集者・二宮隆洋氏。「回想:出版界の四半世紀」から 私が高校・大学生活を過ごした1960年代後半から70年代半ばには、異色の出版社が元気だった。桃源…

白バラの祈り

ドイツ映画『白バラの祈り−ゾフィー・ショル、最後の日々』(2005)を観る。ドイツにおけるナチスの犯罪に対する姿勢は、一貫して厳しい。ナチスに抵抗した地下運動「白バラ」のゾフィー・ショルの映画は、これまで何本か撮られている。今回は、ゾフィー・シ…

ニュー・ワールド

監督名で映画を観ることが少なくなった。ビクトル・エリセと同様、撮影本数が極端に少ないテレンス・マリックは別格だ。30数年間で4本目となるテレンス・マリック『ニュー・ワールド』(2005)は、映像美と自然の美しさで観る者を圧倒するフィルムになっ…

美の死

久世光彦の訃報から1ヶ月以上が過ぎた。遅すぎる追悼文。向田邦子・脚本のドラマ演出、最近では、男女の深層を描く小説家として実力を発揮しつつあることを嬉しく思っていただけに、残念。向田邦子については、「これ一冊でいい」として高島俊男『メルヘン…

東京タワー

第3回本屋大賞受賞作のリリー・フランキー『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(扶桑社)を読了した。リリー・フランキーの自伝。母親との濃密な関係。極言すればマザコン少年の、母親にたいする気持ちが綿々と綴られる。オカンとオトンのつかず離…

寝ずの番

今年2006年は、マキノ省三が映画を撮ってから100年になるという。省三の息子マキノ雅弘は生涯に261本の映画撮った職人監督であった。マキノ雅弘を叔父に持つ津川雅彦が、マキノ雅彦の名前で監督した映画『寝ずの番』は、原作が中島らもの短編『寝ずの番』三…

プロデューサーズ

ミュージカル映画の全盛期は、1950年代以前だろう。名作といわれる『ウエストサイド物語』がスタジオの外にキャメラを持ち出した画期的なフィルムであったことは認めたい。しかし、スタジオから出たキャメラは、ミュージカル映画が持つ虚構性と限定された空…

日本という国

日本という国 (よりみちパン!セ)作者: 小熊英二出版社/メーカー: 理論社発売日: 2006/04メディア: 単行本購入: 13人 クリック: 441回この商品を含むブログ (160件) を見る 「よりみちパン!セ」の一冊として小熊英二『日本という国』(理論社,2006.3)の刊行…

芸術人類学

芸術人類学作者: 中沢新一出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2006/03/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (63件) を見る 中沢新一『芸術人類学』は、『カイエ・ソバージュ』シリーズの第五巻『対称性人類学』の続編ともいう…

モンドヴィーノ

ワインについてのドキュメンタリー映画。監督はジョナサン・ノシター。よほどのワイン通でなければ面白くないだろうと観る前に想像するかも知れないが、インタビュー形式で進捗する現在の世界のワインをめぐる状況はきわめてスリリングな展開を見せてくれる…

ある子供

生まれたばかりの赤ん坊を抱いた必死の表情の少女・ソニア。自分の部屋に帰ると、そこには、恋人ブリュノから部屋を借りている友人たちがいる。自分の家にも入れないソニアは、何とかブリュノを探し出す。冒頭から緊迫した映像に引き込まれる。ブリュノは、…