2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

小説家が読むドストエフスキー

小説家が読むドストエフスキー (集英社新書)作者: 加賀乙彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006/01/17メディア: 新書購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (19件) を見る 小説家で医者の加賀乙彦『小説家が読むドストエフスキー』は、新書版にして…

空中庭園

冒頭からキャメラを強く意識させる映画だ。タイトルが出るまでの長回しでは、キャメラが左右に揺れるどころか、360度回転してしまう。揺れる「家族」、あるいは表面では嘘をつかずに何でも話す家族だが、みんな秘密を抱えていることを、キャメラに象徴させて…

いつか読書する日

いつか読書する日 [DVD]出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント発売日: 2006/02/24メディア: DVD購入: 1人 クリック: 52回この商品を含むブログ (70件) を見る 『キネマ旬報』2005年度の主演女優賞は、田中優子さん。『火火』は観ていたが、未…

THE有頂天ホテル

評判の『THE有頂天ホテル』を観た。三谷監督・三本目のフィルムは、三谷幸喜という人物が、大変よく分かる映画になっている。多数の人物を登場させ、細部が連鎖的に関連して、最後にはすべてが統合される。舞台劇を映画化するにあたり、映画脚本として注目を…

「丁丑公論」と「痩我慢の説」

日本の思想は、外国からの輸入思想が中心であり、それは明治以降の近代社会のみならず、古代から連綿と続く伝統で、外来思想の定着と日本固有の思想という視座では、小林秀雄と丸山眞男は、共通の認識がある。小林秀雄は「直感」で判断し、丸山眞男は「論理…

博士の愛した数式

小川洋子の第一回本屋大賞受賞作『博士の愛した数式』の映画化。物語は成長した少年ルート(吉岡秀隆)が、数学の授業を始めるシーンから入る。なぜ、自分が「ルート」と呼ばれるようになったのか。数学の教師になった経緯を生徒を前に語り始める。 10歳の少…

沖で待つ

『文学界』2005年9月号掲載の、絲山秋子「沖で待つ」を図書館にて読む。女性総合職として働いていた体験から書かれたもので、この種の「会社もの」小説は数少ない。絲山秋子さんの場合、一作ごとに作風というか題材を変えている。大学卒業後、自筆プロフィー…

芥川賞受賞絲山秋子

第134回芥川・直木賞が発表された。芥川賞は四回目で絲山秋子さん。下馬評では松尾スズキが高かった。「沖で待つ」(文学界9月号)は未読だが、初期の女子総合職の経験を生かした内容で、期待が持てる。 これまで、絲山秋子さんの作品『イッツ・オンリー…

旅の途中

旅の途中―巡り合った人々1959-2005作者: 筑紫哲也出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2005/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (11件) を見る 筑紫哲也『旅の途中』(朝日新聞,2005)は、安東仁兵衛で始まり、最後を丸山眞男…

ワンコイン悦楽堂

早熟の悲劇というものがある。灘中学・高校時代に高橋源一郎に「尊師」と呼ばれ、東大時代には、内田樹の修士論文「モーリス・ブランショ論」を徹底して批判した。その人の名は、竹信悦夫という。著者は、休暇中の旅先で遊泳中に他界。 ワンコイン悦楽堂作者…

人の座標はどう変わったか06冬

2006年1月5日の拙ブログで、辺見庸氏の「共同通信」配信連載記事の第1回に触れたが、全4回の連載であった。その記事は、あまりに重い問いかけだった。第1回「世界の涙の総量は増えている」 第2回「人は資本の使徒として生かされる」 第3回「平和には死の花…

小島信夫「残光」

『新潮』2006年2月号掲載の、小島信夫「残光」は一言にしていえば「自己言及的小説」といえよう。読み始めると、小島氏が現在(2005年)から過去に遡及し、夥しい作品への言及のみならず、代表作から引用する。読みすすむうちに、最初は一人称の「私」で妻愛…

家族の痕跡

家族の痕跡―いちばん最後に残るもの作者: 斎藤環出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 30回この商品を含むブログ (37件) を見る 斎藤環『家族の痕跡』(筑摩書房、2006)は、「家族」の常識を顛倒させながらも、そ…

ヴィム・ヴェンダース覚書

【小津安二郎とニコラス・レイ】東京物語 [VHS]出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ発売日: 1991/03/29メディア: CD クリック: 4回この商品を含むブログ (24件) を見る1983年、ひとりの無名の青年がキャメラを持って東京にやって来た。ドイツでは、既に何本か…

ランド・オブ・プレンティ

ヴィム・ヴェンダースの新作『ランド・オブ・プレンティ』(2004、独・米)は、まさしく彼の映画手法である「ロードムービー」の形式を踏んでいる。アメリカで生まれたラナは、両親とともに、アフリカからイスラエルに住み、牧師であった父の死、続く母の死…

奇跡ほか

デンマーク映画の巨匠にして、神聖なる映画作家カール・テオドール・ドライヤーの代表作をスクリーンで観たメモから、覚書として記録しておきたい。ドライヤーの映画を、スクリーンで見ることができることの喜びはなにものにも変えがたい。 カール・ドライヤ…

拝金主義批判

「朝日新聞」1月4日(水)の「新・欲望論」第一回掲載の茂木健一郎『多様性こそが合理的』と、共同通信系の地方紙、5日(木)掲載の辺見庸「人の座標はどう変わったか・1」『世界の総量の涙は増えている』には、共鳴する内容があり、続いてほぼ同様の趣旨…

私は美人

正月から無粋な話が続いたので、酒井順子さんの美人談義をとりあげよう。 私は美人作者: 酒井順子出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2005/11メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (31件) を見る 酒井順子『私は美人』(朝日新聞社、2005.11…

紙つぶてー自作自注最終版

谷沢永一『紙つぶて 自作自注最終版』(文藝春秋、2005.12)について、昨日少し触れたので、この際、今回の書き下ろし「自作自注」分について読んでみる。本書は、『完本 紙つぶて』(1978)*1への「自作自注」を付したもので、巻末には、「人名索引」と「…

『論語』を、いま読む

井波律子『『論語』を、いま読む』(セミナーシリーズ 鶴見俊輔と囲んで・1、SURE,2006)が元旦に届き、一気に読む。この場合の『論語』とは、「桑原論語」のことを指す。ちくま文庫に入っている桑原武夫『論語』について、鶴見俊輔が中心となって、「桑原…