2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

タイガー&ドラゴン『脚本』

テレビドラマ『タイガー&ドラゴン』が終了し、金曜日の楽しみがなくなったので、宮藤官九郎・脚本『タイガー&ドラゴン』(角川書店)を読む。TVドラマとしては、五回目の『厩火事』から観たので、まずはそれ以前のドラマのあらすじを知ることが先決であ…

ニライカナイからの手紙

沖縄を舞台にした映画には、佳作・傑作が多い。高嶺剛『ウンタマギルー』(1989)*1をはじめ、中江裕司『ナビィの恋』(1999)『ホテル・ハイビスカス』(2002)、崔洋一『豚の報い』(1999)*2、篠原哲雄『深呼吸の必要』(2004)など、いずれも沖縄という…

市井作家列伝

鈴木地蔵『市井作家列伝』(右文書院)読了。 市井作家列伝作者: 鈴木地蔵出版社/メーカー: 右文書院発売日: 2005/05メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (5件) を見る 16人の私小説作家をとりあげている。その中で中野鈴子*1、森山啓、…

成瀬巳喜男の世界へ

蓮實重彦・山根貞男編『成瀬巳喜男の世界へ』(リュミエール叢書 36)。本書は、1998年スペインのサン・セバスチャン国際映画祭のカタログをもとに、成瀬巳喜男生誕100年を記念して発行された。 成瀬巳喜男の世界へ リュミエール叢書36作者: 蓮實重…

Musical BatonとReading Baton

Musical Batonに端を発したネット上の「○○の手紙」は、Reading Batonだの、Book Batonだの、あるいはMovie Batonだの、さまざまに変奏して、拡大している。音楽、本、映画など、それぞれに回答する楽しみはあるのだろう。けれども、この種のBatonに対しては…

タイガー&ドラゴン『子は鎹』

予定調和というか、それ以上に感動的な最終回だった。毎回、古典落語を下敷きに、ドラマを展開させる。『品川心中』から、3年が過ぎ、長瀬智也が刑務所から出所するシーン。仰ぎ気味のキャメラが、昂揚した気分に波長を合わせている。彼が、組へ顔を出すと…

キングダム・オブ・ヘブン

キリスト教による十字軍遠征は、聖地エルサレム奪回の名のもとに行われた軍事的制圧にほかならなかった。神の名による戦争、宗教戦争が西欧史に重くかかわっている。リドリー・スコット『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)は、9・11以後を踏まえた、宗教…

『悪霊』神になりたかった男

みすず書房「理想の教室」から、2冊目を読了。 『悪霊』神になりたかった男 (理想の教室)作者: 亀山郁夫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2005/06/10メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (28件) を見る 亀山郁…

はじめたばかりの浄土真宗(インターネット持仏堂2)

はじめたばかりの浄土真宗 (インターネット持仏堂 2)作者: 内田樹/釈徹宗出版社/メーカー: 本願寺出版社発売日: 2005/03/23メディア: 新書購入: 2人 クリック: 22回この商品を含むブログ (29件) を見る 『はじめたばかりの浄土真宗(インターネット持仏堂2)…

いきなりはじめる浄土真宗(インターネット持仏堂1)

いきなりはじめる浄土真宗 (インターネット持仏堂 1)作者: 内田樹/釈徹宗出版社/メーカー: 本願寺出版社発売日: 2005/03/23メディア: 新書購入: 7人 クリック: 72回この商品を含むブログ (48件) を見る 内田樹・釈徹宗『いきなりはじめる浄土真宗』『はじめ…

タイガー&ドラゴン『品川心中』

2日間の出張から帰ると、ネット注文しておいた鈴木地蔵『市井作家列伝』(右文書院)が届いていた。早速目次を見ると、木山捷平・川崎長太郎・小沼丹・徳田秋声・耕治人・葛西善蔵・和田芳恵など、気になる作家の名前が並んでいる。じっくり読みたい。*1 市…

ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学

みすず書房からシリーズ「理想の教室」が、第1回として5冊発売された。<「教えるー学ぶ」ための新シリーズ創刊!>というキャチフレーズ。理論社の「よりみちパン!セ」(2004年10月創刊)に続く「ちくまプリマー新書」(2005年1月創刊)と同…

オーストリア国立図書館

朝日新聞6月12日(日)の「Be on Sunday」の、「奇想遺産」でオーストリア国立図書館が紹介されている。 高さ30メートル近いドームの下、左手を腰にあて、右腕をのばした神聖ローマ帝国皇帝カール6世の石像がそびえている。神々の姿を描いたフレスコ画…

海を飛ぶ夢

アレハンドロ・アメナーバルの『海を飛ぶ夢』(2004)は、尊厳死をめぐる<生と死>に、直接向きあうフィルムだ。25歳のとき海の事故で、首を骨折し、首から下の身体を動かすことができないラモン(ハビエル・バルデム)は、家族の助けを受けながら28年…

ザ・インタープリター

実際に国連の内部で撮影した話題だけでも観る価値がある。それ以上に、アメリカ映画が、民主化という名目のもとで、他国の内戦に介入するケースとして、また9・11以後のアメリカの方向性を批判した映画としても存在価値抜群のフィルムだ。反暴力、反戦、…

タイガー&ドラゴン『粗忽長屋』

『タイガー&ドラゴン』は、毎回、レベルの高い映像、ひねったクドカンの脚本、「落語」を現代に読み替える手腕に、舌を巻く面白さ。最近、これほど観ることの快楽を味わい、はらはらドキドキさせるドラマは、稀有な体験だ。 第九回は、シュールな古典落語『…

別れる理由

小島信夫の『何という面白さ!『「別れる理由」が気になって』を読んで』(『群像』7月号)は、坪内祐三の『「別れる理由』が気になって』について、<小説>という表現で絶賛する。「別れる理由」が気になって作者: 坪内祐三出版社/メーカー: 講談社発売日:…

大航海

id:tatar氏が言及している『大航海No.55』(新書館、2005)は、「以心伝心」というべきか私も目次を眺めていたところだった。論客25人の選択に疑問を抱いたので、生年を調べてみた。現役が前提であるらしいが、25人の根拠が分からない。 No.55 特集 現代…

電車男はビルドゥングスロマンだ!(2005年6月7日追記)

『電車男』現象とまでいえそうな過剰な反応が、ネット上に氾濫している。『電車男』とは何か。自立できないヲタク、「自分探し悲劇」(香山リカ)の結果なのだろうか。少なくとも、映画版では、山田孝之は見事にエルメスのおかげで自立できていた。また、ひ…

電車男

書籍版『電車男』も読んでいないし、リアルタイムで「2ちゃんねる」のスレを読んでもいない。従って、一本の映画として観た感想にすぎないことを、最初に断っておきたい。 秋葉系オタク22歳の山田孝之が、電車の中で女性たちに絡む大杉漣から、中谷美紀を…

タイガー&ドラゴン『出来心』

今回の見所は、笑福亭鶴瓶の上方落語の実演だろう。さすが、ほんものの落語家だけのことはある。余裕と迫力があった。 様々な「出来心」が仕掛けられている。まずは、長瀬智也が岡田准一から教わる『出来心』を、師匠の西田敏行に尋ねられ、つい「出来心」で…

クローサー

四人の男女が絡み合う、四角関係のドラマ。マイク・ニコルズ監督『クローサー』(2004)は、恋愛のほろ苦さを、皮肉たっぷりに描いてみせる。恋愛とは、所詮、「幻想」にすぎないのだ。特に近年、「恋愛至上主義」的世相となっていることへの警告ともとれる…