2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

売文生活

日垣隆『売文生活』(ちくま新書)が面白い。 売文生活 (ちくま新書)作者: 日垣隆出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/03/08メディア: 新書購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (65件) を見る 日垣氏の執筆の意図は、「ビジネスモデルとしての…

嗤う日本の「ナショナリズム」

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)作者: 北田暁大出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2005/02/24メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 202回この商品を含むブログ (326件) を見る 北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHK…

成城だより

成城だより 上 (講談社文芸文庫)作者: 大岡昇平出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/03/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (19件) を見る 前日の「車谷長吉の原点」について補足しておく。車谷氏が今後は「史伝」を書くという…

女塚

女塚―車谷長吉初期作品輯作者: 車谷長吉出版社/メーカー: 作品社発売日: 2005/04メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る 車谷長吉の初期作品輯『女塚』(作品社)は、著者が30歳で無一物になるまでの12年間に書かれた作品、そ…

コーラス

パトリス・ルコント映画の常連俳優ジェラール・ジュニョが、<池の底>という名の学校寄宿舎の舎監として、赴任する。時は1949年。その学校の校長は厳罰主義で、生徒たちを厳しくしつけている。いわば、おちこぼれ生徒たちの集団を相手に、授業し、舎監…

バタイユ 魅惑する思想

さて、バタイユである。酒井健『バタイユ 魅惑する思想』が1月に出た。 バタイユ―魅惑する思想 (哲学の現代を読む 1)作者: 酒井健出版社/メーカー: 白水社発売日: 2005/01/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 16回この商品を含むブログ (9件) を見る バ…

ラカン 鏡像段階

現代思想冒険者たちSelect 鏡像段階 ラカン作者: 福原泰平出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/04/13メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 28回この商品を含むブログ (30件) を見る ジャック・ラカン(1901−1981)とジョルジュ・バタイユ(…

詩とことば

詩とことば (ことばのために)作者: 荒川洋治出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/12/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (31件) を見る 荒川洋治『詩とことば』(岩波書店)は、「ことばのために」シリーズの一冊。 普段は…

コンスタンティン

キアヌ・リーブスの「次のマトリックス映画」というキャッチ・コピーに惹かれて『コンスタンティン』(フランシス・ローレンス監督、2005)を観た。ところが、この映画は、極言すればクリスチャン、それもカトリック教徒のための宗教映画だった。 少なくとも…

知の教科書 キリスト教

ローマ法王・前法王ヨハネ・パウロ2世の死去にともなう、後任の法王の選出方法が、「コンクラーヴェ」と呼ばれることなど、今回の一連のニュースで知りえたことが多い。 知の教科書 キリスト教 (講談社選書メチエ)作者: 竹下節子出版社/メーカー: 講談社発…

火火(ひび)

高橋伴明監督『火火』(2004)は、文句なしの傑作だ。『TATTOO(刺青)あり』(1982)や『光の雨』(2001)の高橋伴明が、なぜ女性陶芸家の半生と、息子の白血病にかかわる映画を撮ったのだろうか、との疑問がわくが、それは映画を観ることで解消され…

またの日の知華

原一男『またの日の知華』(2004)は、主人公の知華を、四人の女性が演じるという趣向で構成されていて、その背後に60年代から70年代、高度成長時代と反政府運動がニュースフィルムとして流れる。 エロスとタナトスが表裏一体として捉えられていることは、第…

「負けた」教の信者たち

「負けた」教の信者たち - ニート・ひきこもり社会論 (中公新書ラクレ)作者: 斎藤環出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/04/10メディア: 新書購入: 10人 クリック: 253回この商品を含むブログ (92件) を見る ラカニアンにして哲学者ジジェク派でもあ…

風光る丘

風光る丘作者: 小沼丹出版社/メーカー: 未知谷発売日: 2005/03メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (7件) を見る 小沼丹『風光る丘』(未知谷)が、『小沼丹全集』の補遺的なかたちで同じ出版社から刊行されている。小沼丹の唯一…

マグダラのマリア

マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女 (中公新書)作者: 岡田温司出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/01/01メディア: 新書購入: 11人 クリック: 194回この商品を含むブログ (68件) を見る 岡田温司『マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女』(…

アビエイター(補足)

マーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』について、補足する。 いくつかのブログでは、キャサリーン・ヘプバーン役で、ケイト・ブランシェットが過剰演技をしているとの意見が散見される。ケイト・ブランシェットのアカデミー賞助演女優賞へのクレーム…

アビエイター

マーティン・スコセッシ監督作品『アビエイター』(2004、米)を観た。ケイト・ブランシェットは、実在人物でしかもアカデミー賞主演女優賞4回、スペンサー・トレイシーとの生涯を通じた恋人関係、自立する女性の目標でもあるキャサリーン・ヘプバーン役で…

ヴィタ−ル

都市空間のなかで、孤独な男が薄暗い部屋で物思いにふけっている。彼は記憶を喪失しているようだ。自分を探すことと、記憶喪失の原因となった交通事故時に同乗していた女性が恋人であるらしいことが示される。 塚本晋也『ヴィタ−ル』(2004)は、医学生によ…

『別れる理由』が気になって

本書は、坪内祐三が『群像』に延べ2年間連載した評論であるともに、対象となった小島信夫『別れる理由』は、12年あまり同じ『群像』に連載された異常に長い小説でもある。 『『別れる理由』が気になって』は、本格的な小島信夫論であり、異様に長い『別れ…

象の消滅

村上春樹の短編集『象の消滅』が、いわば逆輸入されるかたちで洋書のペーパーバック版のような装丁で発売された。17篇の短編が収録されているが、いずれも文庫や全作品で読めるもの。一部『レーダーホーゼン』のみ英語版から翻訳されたものだと言う。 「象…

恋は五・七・五!

荻山直子の長編第二作『恋は五・七・五!』は、文系のスポ根ものという型破りでありながら、エンターテインメントの定石を踏まえた上質の作品になっている。「映画(イマージュ)=運動」「映画(イマージュ)=時間」理論(ドゥルーズ)からいえば、およそ動…